- 716 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 22:36:59.81 ID:xtR38uQo
-
- ※今までの記事
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その2
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その3
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その4
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その5
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その6
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その7
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その8
- ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その9
- ※今までの記事
- 週末にするとか言ったが、今日書くことにした件。
第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』後編
3年目の春。
相変わらず厳しいスケジュールばかりで疲労はたまっていたが、- それは俺だけじゃない。
こんな所で弱音など吐いてはいられないのだ。
「おはヨーグルト!」
井出だ。こいつはいつも元気だ。
「キムちゃんと竹中ちゃん、もう2年目じゃーんww」
「そうですね」
両肩に手を置かれ、めんどくさそうに返事する木村くん。
「そろそろ仕事にも慣れたぁ?」
肩を揉む井出。
「僕じゃなくて、竹中さんに絡んでくださいよww 今仕事してるんで」
「これだから真面目くんはつまんねーんだよな」
井出が離れる。それと同時に
「竹中ちゃん、左舷弾幕薄いぞ!」
ゲッツのポーズを繰り出す井出。
「井出さん、なにやってんの!」
はいはい、ガンダムガンダム・・・。
「マ男さん」
木村くんだ。
「今日、お昼一緒に良いです?」
む?- それは俺だけじゃない。
- 730 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 22:47:09.26 ID:xtR38uQo
- 木村くんから飯の誘いなんて珍しいな。
「あぁ、いいよ」
しかし、何の話をするのだろうか?- 仕事では特に問題無さそうだし、人間関係の事だろうか?
いや、もう最近の彼は藤田さん以外は歯牙にもかけてない様子だが。
「お、おは、お、おおおお、は」
「あ、上原さん! おはようございます!」
木村くんが笑顔で挨拶する。
- 上原さんはそれを見て、軽い足取りになった。
「おはよう」
同時にリーダーがやってきた。- 上原さんがビクリとなる。
「おい、上原ぁ!!」
また始まった。
「おまえ、挨拶ぐらいしろよ、なぁ? なめてんの?」
「リーダー、井出さんが呼んでますよ」
早速絡むリーダーに、木村くんが仕掛けた。
「あ? なんだ井出」
「なんだかんだと言われたら、答えてあげるが世の情け!- 呼んでないすよ、リーダー」
「なんだよ。あーあ、今日も仕事だよ、めんどくせー」
- 上原さんがビクリとなる。
- 738 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 22:58:03.97 ID:xtR38uQo
- リーダーのぼやきには目もくれず、
- 俺は仕事モードに入っていた。
俺も3年目となり、中堅に差しかかろうとしているのだ。- しかし、すぐ後ろには木村くんがくっ付いている。
追い抜かれる、とは限らないが、やはり後輩に抜かれるというのは、- 先輩からしてみればイヤなものだ。
その昔、俺が廃人となった時、藤田さんは俺を原石と言ってくれた。- 今は少しでも光が出てきただろうか。
「マ男くん、ちょっと良いかな」
おっと、藤田さんだ。
「今日、お昼空いてる?」
う・・・実は木村くんと約束があるのですが・・・。
「ちょっとお昼は・・・」
「ん? そうか。じゃあ、また次の機会にしようか」
「はい、どうも申し訳ありません」
「気にしないで良いよ」
そして仕事再開。
「おい、マ男、藤田」
「はい」
同時にする返事をする俺と藤田さん。
「お前らにちょっと話がある。応接室に来い」
む・・・。何か今日は話が多いな。
- 俺は仕事モードに入っていた。
- 743 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 23:09:37.43 ID:xtR38uQo
- 応接室に移動する俺と藤田さん。
「話というのはだな」
リーダーから個人的に話をするなんて何かの間違いじゃないのか?
何でもかんでも自分勝手に決めるのが当然という人なのに。
「木村居るだろ、木村」
「えぇ」
「あいつ、おまえらどう思ってんだ」
質問の意味がよく掴めない。- 人間的に、なのか、仕事、という意味なのか。
「勤務態度はともかく、成長速度は凄まじいとは感じますね。- 事実、マ男くんよりも伸びる速度が上ですから」
や、やはりそうか。急に焦り出す俺。
「藤田、お前もそう思うか。実はな、俺もそう思ってんだよ」
「何かされるんです?」
「ちょっと、リーダーの仕事をやらせてみようと思ってんだ」
え? なに?
「それはまた大きく出ましたね」
「いやーあいつ、態度はともかく、素直に言うこと聞くからな。反発する時はしてくるが。
だから、ここで俺の負担を減らして、あいつに持たせようと思ってんだよ」
それは危険だぞ。- リーダー、あんたは彼の野心を知らないのか。
「リーダー、木村くんにリーダーの座を奪われるかもって心配はしないんですか?」
一応、聞いておく。
「あぁ? お前バカか。俺があんな若造に遅れを取るわけないだろうが」
バカはあんたじゃないのか・・・。
- 751 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 23:17:41.13 ID:xtR38uQo
- 「最近、特に仕事がキツくてな。俺一人じゃめんどくさくてかなわん。
- 木村にちと荷物を担がせようと思ってな」
ダメだこいつ・・・。目先のことしか頭に無いぞ・・・。
「それだったら、マ男くんに任せれば良いと思いますけどね。- すでに前任の経験がありますし」
リーダーが、はぁ? みたいな顔をしている。
「コイツはリーダー向いてねぇよ。人の上に立つような人間じゃねぇ」
中卒だから、という言葉が見え隠れしている。
「そうですかね。私は、今の開発室の中じゃ一番向いていると思いますが」
な、何を言ってるんですか。
俺なんかがリーダーに向いてるわけないでしょ・・・。- てか、一番向いてるのはあなたですよ、藤田さん!
「あぁ?」
「もちろん、リーダーを除いて、ですよ」
ナイス自己フォローだ。
「俺は当たり前だ」
「ですが、木村くんですか。私はあまり賛成はできませんが・・・」
む、そうなのか。それは少し意外だな。
「おい、マ男。おまえ、木村の教育係りしてただろ。お前はどうなんだ」
どうなんだって言っても・・・。
「私は藤田さんが一番向いてると思いますよ」
俺の中にはこれしか無いのだ。
- 木村にちと荷物を担がせようと思ってな」
- 756 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 23:27:20.68 ID:xtR38uQo
- 「あぁ!?」
しまった。
「い、いえ、もちろんリーダーを除いての話ですよ」
「だろうが」
あ、危ない。藤田さんが先にこれを使っていなかったら、- 絶対面倒なことになっていたぞ。
「うーん、私はリーダーには向いてないよ」
謙遜しているのか。
「私は、人に表立って指示するのは得意じゃないからね。
まぁそれを抜きにしたとしても、私がリーダーに- なると色々と弊害が出てくると思うよ」
「マ男、お前ちゃんと考えて物言ってんのか?- 藤田は一番仕事が出来るだろうが」
それはもちろん分かっているが。
「そんな奴が外に出たりなんやかんやしてみろ、そのシワ寄せはどうすんだよ」
う、うーむ。なるほど、- そういう考え方も出来るのか・・・。確かに・・・。
でも、それなら木村くんだって一緒じゃないのか?
「木村くんには主にどういった仕事をさせるつもりなんです?」
「外出るのは俺がやるから、基本的に管理だ。まぁ、最初のうちは外にも連れて行くつもりだが」
管理だったら、藤田さんの方が良いんじゃないのか・・・。
「どうですかね・・・。私はまださせない方が良いかと思いますが」
「まぁ見とけよ。俺が手足のように使ってやるからww」
そして出て行くリーダー。- 結局、俺たちは何のために呼ばれたのだ。
- 772 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 23:38:44.84 ID:xtR38uQo
- 「藤田さん、どうなんですかね・・・。木村くんにやらせると言うのは・・・」
「危ないだろうね。彼の上昇志向は凄いだろう」
知っていたのか。
「えぇ・・・。以前、二人で話をしましたけど、リーダーになるのを目標としてるみたいです」
「取って代わられるかもしれないな」
その通りだ。- そして、そうなると俺たちはそれに適応せざるを得ない。
リーダーと木村くんでは性格が違いすぎる。
彼がリーダーになったら、どうなるかは分からないが、- あまり良い結果になるとは思えない。
「木村くんの最近の調子はどうなの?」
「どうというか、不調を今まで見たことがありません。精神的にも強いと思います」
「凄い子だな。普通、1年目か2年目で挫折の一つや二つは経験するものなんだけど」
大器。それを思わせる。
「リーダー、木村くんを使うでしょうね」
「だろうね。まぁあの人は権力ごとに関しては敏感だから、- 危ないと思ったらすぐに何らかの対策は取りそうだけど」
だけど、木村くんはそれを上回る潜在能力を秘めている。
「今日、実は昼に木村くんとご飯食べる約束なんですが」
「うん」
「この件について話をしてみた方が良いですかね」
「誘ったのはどっち?」
「木村くんです」
「なら、先に彼に喋らせてみると良い。- 彼から話があるってことは、出世とかそこらへんの話だと私は思うから」
了解しました。
そして昼休み。
- 774 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/14(金) 23:40:02.84 ID:e7lMCrwo
- >彼から話があるってことは、出世とかそこらへんの話だと私は思うから
藤田さん人物分析しすぎだろwwww
- 785 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/14(金) 23:48:10.47 ID:Pec1xEoo
- リーダー相変わらずアホやな
- 787 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/14(金) 23:49:44.98 ID:xtR38uQo
- 「木村くん、話って何?」
「あーそれなんですけど、僕ってもう2年目じゃないですか」
『もう』なのか。- 『まだ』が正しいのではないか。
「さすがにまだ一番下ってのが納得行かなくて。入社の際、社長に面接で
『うちには入社して二週間でリーダーになった人が居るよ』って聞いてたんですけど」
そ、それ俺だ・・・。- 何言ってんですか、社長・・・。
「僕より出来る人って、藤田さんじゃないですか。あとマ男さん。
まぁリーダーになったのは藤田さんだと思うんですけど、- 僕もそろそろなっても良いんじゃないかなって」
おいおいおいおい。
藤田さんの言う通り、木村くんから喋らせておいて良かった。- こんな事を考えていたのか。
リーダーの行動、木村くんの思考、時期、全てがマッチングしている。- これはマジでひょっとするかもしれんぞ。
「マ男さんはどう思います? てか後押ししてくれますよね」
う、うーむ。何とも言えん・・・。後押しっていうか、- もう何もしなくてもチャンスがめぐってくるよ・・・。
「木村くんは、リーダーという仕事にプレッシャーは無いの?」
「プレッシャー? そんなの無いですよww」
そんなのって。
「でも大変だと思うよ、ホントに。現リーダーだって、毎日ひぃひぃ言ってるじゃない」
「あの人だからでしょ。僕は違いますよ」
耳が痛くなってきた。- 僕もそろそろなっても良いんじゃないかなって」
-
- 804 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:00:51.64 ID:K32TwDYo
- 木村くんはやる気だ。そして、それしか見えていない。
今の立場で満足するなど、これっぽちも思っていないだろう。- 確かに今の立場で収まる器ではないと思うが・・・。
しかし、素直に賛成が出来ない。木村くんは確かに仕事も出来るし、- 今まで与えた課題は全てこなしてきた。
だが、まだ辛酸をなめていない。- 挫折を経験していない。これが俺の中で引っかかる。
「それに、マ男さんも分かってるじゃないですか。- 今まで僕は失敗してないし、これからもしませんよ」
凄い自信だ。しかし、その自信を裏付ける実力があるのも確かだ。 - 確かに今の立場で収まる器ではないと思うが・・・。
どうするべきか。リーダーの話をするべきか。- すれば、確実にここで一気に調子付くだろう。
仮にしなければどうなるか。
リーダーから直接、話を聞くことになる。- そうなると、俺はもう口を挟めない。
ここで話した所で、俺の忠告を聞くとはとても思えないが、- 木村くんの行動は結果的には変わらないのだ。
よし、今言う。
「実はさっき応接室で、リーダーと話をしたんだけど」
「あぁ、藤田さんと三人でのやつです?」
「そう。で、その時にリーダーが木村くんを補佐にしたいって言い出して」- すれば、確実にここで一気に調子付くだろう。
「・・・へぇ」
瞬間、彼は悪魔の笑みを浮かべていた。
- 805 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:01:59.25 ID:4.5A2Kwo
- >「・・・へぇ」
逃げてー!?
リーダー逃げてーーーーーっ!!?
- 806 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:02:18.05 ID:yP8bZMQ0
- 木村「計画通り。」
- 822 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:10:41.71 ID:K32TwDYo
- ・・・まずったか?
「私と藤田さんは意見を求められたんだけど、まぁどちらとも言えずって事に」
嘘をついてしまった。というか、つかざるを得なかった。- 彼の気迫に圧されてしまったのだ。
「どちらとも言えずってことは、少なくとも賛成はしてないってことですよね」
というか、賛成していない。- 今の君では、まだまだ心配事が多い。
- 実力だけでは務まらないのだ。
「まぁ別に良いですけど。力があると妬まれるのは常ですから」
何を言ってるんだ・・・。
「そうですか、僕がリーダー補佐ですか。藤田さんは社員のままですよね」
肩書きで争っているわけじゃないんだよ、木村くん・・・。
早く抑えないと、マジに暴走して大変なことになってしまうぞ。
「でも木村くん、すぐにリーダーになろうって考えるより、まずは経験を積んで」
「リーダー経験のないマ男さんから何を言われても、僕は何も感じませんよ。
僕は、僕の考えがありますから。それに、- 経験ならリーダーから教われば良いじゃないですか」
コイツ、調子に乗りすぎだ。人から教わって経験になるなら、- 今頃人類は大進化を遂げているだろう。
自らが経験しないと分からない部分だって多いんだ。
「そうか、やっとリーダーか」
リーダー補佐な。まだ気が早い。
「いつ話が来ますかね」
「分からないね。昼からじゃないかな」
「そうですか、楽しみだな」
口元を緩めながら、木村くんは呟いていた。
- 851 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:20:34.25 ID:K32TwDYo
- そして会社に戻る。
俺は落ち着かなかった。- あの木村くんの表情はハッとさせるものがあった。
間違いなく大器だ。俺なんて足元にも及ばないだろう。- 藤田さんとは違う何か・・・凄みとでも言うべきか。
- それを感じた。
藤田さんはどこか優しく、安らげる感じがするが、- 木村くんは違う。何が違うかと言われれば答えられないが・・・。
何か猛烈にイヤな予感がする。- それは恐怖に近い。
「ただいま戻りました」
木村くんの足取りは自信に満ち溢れていた。- イケメンというのが、さらにそれを引き立てている。
「マ男くん」
藤田さんだ。
「話したの?」
「えぇ・・・。正直、少し後悔してます・・・」
俺の力では何も出来ない。先輩なのに。- なんて無力なんだ。
「彼の度が過ぎたら、私が抑えに回ろう」
お願いします・・・。
まだまだ藤田さんが俺には必要だ。- 木村くんという巨大な器では、俺などチッポケな存在でしかない。
「おい、木村」
「はい」
「ちょっと来い」
「・・・はい」
悪魔の笑み再び・・・
- 863 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:24:53.92 ID:ppncSOw0
- 今追いついたけど、
木村が格段にウザくなってるwwwwww
- 869 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:28:03.01 ID:K32TwDYo
- 「お前、リーダーに興味あるか?」
この開発室から、- 誰かが消える。
- 間違いない。
「あります」
目が笑っていない。- そして、気力が顔から溢れ出ている。
なんという後輩だ。- 俺の手の中に居たのが信じられん。
「俺の仕事を手伝って欲しいんだがな」
「ホントですか。ぜひやらせてください、僕で良ければ、好きなように使ってください」
普通なら、謙虚で好感の持てるであろうこのセリフも、- 彼の口から発せられた瞬間に、悪魔の囁きとなってしまう。
リーダーは気付いていないのか。この異様な空気に。あの異様な笑顔に。
お前は自分の立場が非常に危うい所まで来ているんだぞ、気付け。
「おぉ、そうかそうかww よし、次のプロジェクトでお前は俺の補佐しろww」
「はい!」
終了、- 詰み。
- おつかれです。
この開発室から、- 一人の人物が消えようとしていた。
- 875 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:29:25.50 ID:X5dOskAO
- さらばリーダー(元)
- 881 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:30:38.47 ID:yP8bZMQ0
- リーダー・・・無茶しやがって・・・
- 882 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:30:40.09 ID:L.UdhsAO
- リーダー死んだwwwwwwww
- 901 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:36:03.48 ID:K32TwDYo
- こうして、木村くんはリーダー補佐となった。
それが決まってからというもの、木村くんはさらに力を発揮し
スケジュールを1日進みで仕事をこなすようになってしまった。
一体、どこまで伸びるのか。限界は無いのか。- 恐ろしい後輩を持ってしまった俺だが、
- それ以上に次のプロジェクトが心配だ・・・。
そしてついにやってきた。次のプロジェクト- ・・・という触れ込みだったが、2つか3つこなした後だ。
夏真っ盛りも過ぎ去り、残暑が厳しいそんなある日の出来事だ。
「以上が今回のプロジェクトの説明だ」
今回のプロジェクトは、今までの中でもかなりの規模を誇る内容だった。
いや、正確には規模ではなく、納期の方だ。- 説明だけしか聞いてないため、よくは知らないが
製造が平均で2日に一つというペースだ・・・。- しかもランクA~Sと来てる。
この時点ですでにデスマフラグが立ってるぞ・・・。
- 916 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:48:16.41 ID:K32TwDYo
- 「まぁ見りゃ分かると思うが、はっきり言って今回は厳しい。史上初かもな」
おいおい・・・。
スケジュールを見てみる。とりあえず自分のだ。
うんたら作成画面(1~4)、こうたら自動変更(OL/バッチ)・・・
これキツくないか? いや、元々キツいけど、- どう見たって泊り込みしないとこなせる内容じゃないぞ。
「今回、上原さんのスケジュールあめぇwwwwwwwwww」
井出が吹き出した。他人の心配じゃなくて、- 自分の心配をした方が良い。
お前はマジに死亡フラグが立ってる。
「あ、あ、あああ」
「俺はもっと引けって言ったんだがな。木村に何か考えがあるそーだ」
不満そうなリーダーだが、逆に木村くんはそれを押し通したのか。
「ちなみに、製造は二日単位がほとんどだが、- 修正や見直しで1週間ぐらい空きを取ってる。
それも一応考慮に入れておけよ」
後々に修正が入る可能性が高いということだ。
デスマになる要因を全て含んでいるぞ・・・。- なんということだ。
「何か質問ある奴」
「良いですかね」
藤田さんだ。
- 934 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 00:56:35.52 ID:K32TwDYo
- 「このスケジュール、無理がありすぎて成功の見込みが感じられないのですが、
- その辺についてはどうなんですか?
何も考えなしでこの仕事を請けるというのは、少し理解できないんですが」
「出来ると思ったから、仕事を請けたんですよ」
木村くんが言い返す。藤田さんがキッと見返した。
「根拠は?」
「僕の判断です」
「答えになっていない。このスケジュールでは無理がありすぎる」
「おい、藤田。請けたもんはしょうがねーだろうが。文句抜かすな」
そういう意味で言ってるのではない。木村くんは、- 今後間違いなくリーダーとなり、立場を確立するはずだ。
そうなった場合、今のようなスケジュールを許してしまうと、- みんなが潰れてしまう。
先を見越しての藤田さんの発言なのだ。- 目先のことだけで判断をしていない。
「今回はしょうがないでしょう。ですが、- 今後もこれが続くようなら、辞める人も出てきますよ」
井出や竹中のことだ。
「だったら、その人はそれまでだったって事ですよ」
なんだコイツは。まるで話にならないぞ。
- その辺についてはどうなんですか?
- 937 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:58:10.65 ID:KSqzUvE0
- ………最悪だ
- 943 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 00:59:00.57 ID:h2gPmjoo
- 木村…能力あるんだが、能力の劣る人間を使うって事ができないな
こいつリーダー無理だろう…
- 19 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 01:11:19.92 ID:K32TwDYo
- 藤田さんが小さくため息をついた。
話にならない。自分が絶対。- それ以外は眼中に無い。
- 木村くんは完全独裁者タイプだ。
「木村くん、君がこの開発室の戦力をどう分析しているのかは知らないが
みんながみんな、君と同じように出来ると思ったら大間違いだ。- 人には人それぞれの適正、ペースがある。
それに沿って物事を考えないとダメだろう」
「僕だけが契約の話を進めたのではありません、リーダーも一緒です」
ここで責任転嫁か。さすがに俺もイライラしてきた。
リーダーは沈黙している。- 気圧されているのか、あのリーダーが。
「今、私が話してるのは君だ。リーダーじゃない。君が答えなさい。
このスケジュール、私は無理ではない。だが、それでも厳しいよ。
それなのに、私の後輩であるマ男くんにも同じように引いてるだろう。- ちゃんとリーダーから戦力分析を聞いたのか?」
藤田さんが語気を荒げた。場の空気が一瞬にして凍りつく。
「だったら、今すぐこの契約を捨てろと?」
「そういう意味ではない。この仕事はもうこなすしかないだろう。- 契約を結んでしまった以上、裏切ることは許されない。
私が言ってるのは今後だ。君の事だ、この先も補佐に回るつもりなんだろう」
そしてリーダーになる。藤田さんはこの部分を飲み込んだようだ。- 現リーダーが居るのだ。面倒な事になると踏んだのだろう。
- それ以外は眼中に無い。
「今のスケジュールを許してしまえば、今後もそれを許すことになる。- だからこうやって忠告している」
「このスケジュールをこなせないなら、その人は必要無いですよ。
出来る人だけを残す。無駄を省く。- そうすれば、より良い態勢が作れるじゃないですか」
何を言っているんだ・・・。こいつはやばい。やば過ぎる。
藤田さん、頼む・・・! もうあなたしか居ない!
- だからこうやって忠告している」
- 20 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 01:13:15.35 ID:gF/I6ZI0
- 木村君にとってもしかして。。一番不要と思っているのが藤田さん!?
- 21 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 01:13:18.92 ID:9tRGgMIo
- もうだめだ・・・
- 58 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 01:21:39.39 ID:K32TwDYo
- 藤田さんが目を見開いた。
- 怒っている。
だが、感情だけで攻めようとはしていない。- 理性を保っているようだ。
一方の俺は、正直言ってキレる寸前だ。
「君は勘違いしている。人は物じゃないんだぞ。- 君は何様のつもりかは知らないが、君は一人の社員だ。
経験年数も2年と、まだ一番浅い。確かに君は実力もあるし、- 課題は全てこなす所か、早く終わらせている。
だが、今この場に居る人間は全員、私たちの仲間なんだぞ。- それを必要無いなどと切り捨てるのが許されると思ってるのか」
「藤田さんの言いたいことが分からないんですが。- 僕は無駄を省くと言ったんですよ。出来ない人が必要なんですか?」
ふざけるのも大概にしろよ、木村。
「君の中での認識は、出来る・出来ないの二通りしかないのか? 人には適正がある。
一人でやる仕事、外に出向く仕事、物を教える仕事、それぞれを見極めて、- 使いこなすのが上の人間の役目だろう」
「その前に、不必要なものを取り除く必要があると僕は言ってるんですよ」
「木村、いい加減にしろよ!」
俺は叫んでいた。
- 怒っている。
- 63 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 01:22:58.32 ID:gDwnOKQo
- マ男のターン!
いけえええええええええ
- 101 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 01:29:33.97 ID:K32TwDYo
- 「マ男くんがキレたぞー! 社長だー! 逃げろー!」
井出がわめく。- 俺はオールスルーで木村の顔を睨みつけた。
「なんですか、マ男さん」
「なんですかじゃないだろう。今のお前がリーダーなんて出来るわけがない」
「あなたに言われたくないですね。三年も勤めてずっと下っ端なんでしょ」
歯を食いしばる。今までの人生で、ここまで頭に来たことがあるか。
いや、ない。
「下っ端だから、意見しちゃいけないのか」
思うように考えていることが言葉に出ない。- 木村のあの冷静な顔を見ろ。
何こいつキレてんの? バカじゃねww というのが読み取れる。- 落ち着け、俺。
「木村くん、マ男くんはリーダーの経験があるよ」
藤田さんだ。
「しかも補佐じゃない。リーダーという肩書きを持ったことがある」
木村の顔が、歪んでいく。
- 111 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 01:30:45.91 ID:wv9rjXIo
- ktkrwwwwwwwwwwwwwwww
- 117 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 01:31:10.24 ID:RcDkhRco
- ここでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
- 161 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 01:39:32.15 ID:K32TwDYo
- 「藤田さんじゃなかったんですか」
「私はリーダーの経験などない。これからもするつもりはない」
「マ男さんがリーダー経験者だったんですか」
「はっきり言う。『君なんかより』マ男くんの方がずっとリーダーに向いている」
俺は興奮しすぎて、- 何か泣きそうになっていた。なんでだろうね。
「君は自分の視点でしか物事を考えられないだろう。- マ男くんはそうじゃない。きっと過去に辛い経験をしたのだろう。
挫折も味わってきたに違いない。それらが糧となって、人を思いやって、- 穏便に物事を進ませていく力を持ってる。
所が君はどうだ? こんな無茶なスケジュールを引いて、- くだらない自論を展開して。物事を広く見た方が良い」
俺は唇を震わせて、二人のやり取りを聞いていることしか出来なかった。
木村くんがチラチラと俺を見てくる。
「でも、僕の方が」
「君の方が確かに持ってる力は上だろう。- だが、それだけだ。それだけしかない。
君はまだ学んでないことが多すぎる。このリーダー補佐の立場で、- 色んなことを学ばないと、まだまだ上には立てないよ」
木村くんが黙り込んだ。
藤田さん、あなたは本当に・・・本当に凄い人だ・・・。
- 241 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 01:50:59.10 ID:K32TwDYo
- 「国会のようだ」
井出が呟いた。- しかし空気は変わらない。
「悲しいけどこれ・・・」
竹中が呟くが、最後まで言えなかったようだ。- まだまだ修行が足りていない。
「そうですか、マ男さんがリーダー経験者でしたか」
・・・。
「二週間で、リーダーでしたか」
木村くんは、呪文のように繰り返していた。
よほどショックだったのか。- やはり、俺は相当見下されていたらしい。
「語気を荒げてしまってすまないね。今の君には、これぐらい言わないと聞き入れないだろうから」
「・・・」
木村くんが不快そうな表情を浮かべる。 - しかし空気は変わらない。
「私もまだまだ子供のようだ。感情を抑える事ができなかったよ。
まぁ、もう今回のスケジュールは仕方がない。みんなで力を合わせてやり遂げようか」
「お、おう。そうだぞ、おまえら。思いやりと穏便さでやってくんだぞ!」
「リーダーが言うと説得力ねぇwwwwww」
「おい井出」
「あ、はい」
「お前ちょっと残れ」
「そんなぁ」
笑いに包まれる室内。
だが、木村くんだけは笑っていなかった。
- 303 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:00:20.61 ID:K32TwDYo
- そしてプロジェクトが始まった。
俺と木村くんの仲はすっかり冷え込んでしまい、- あれからは一言も喋っていなかった。
しかし、今はそんな事はどうでもいいのだ(よくないが
とにかく今回はスケジュールが厳しい。はっきり言って、- 休憩時間など使っていると即響くというような状況なのだ。
「僕の方ができるんだ」
時折、木村くんの独り言が聞こえてくる。
ちなみに、スケジュールは木村くんが一番厳しい。- 実力面での話だが。
しかしそれでも、彼はオンスケだった。
やはり言うだけの実力は備えているのだ。- だが、足りないものが多い。
プロジェクトに入る前、俺が危惧していたことが今回、見事に的中した。
早めにでもいいから、藤田さんに相談しておくべきだったか・・・。
そんなこんなで、俺は必死に仕事をこなしていた。
このプロジェクトはホントにキツくて、人間関係の軋轢に加え、- 肉体疲労が重なり、結構マジでやばいことになっていた。
週2~3は会社に泊まり込みだ。上原さんに至っては
「・・・・すぴー」
寝ていた。
- 346 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:07:35.62 ID:K32TwDYo
- 「おい、上原」
リーダーも疲労の極みなのか、言葉に力が無い。
「すぅー・・・・すぅー・・・」
「おい」
リーダーの顔が歪んでいく。
「上原さん、起きてください」
木村くんだ。
その瞬間、ハッとしてマウスをカチカチとクリックしまくる。キーボードも打ちまくる。
遅いですから、上原さん。
「寝んじゃねーよ、ボケが」
リーダーはもう相手にもしたくないのだろう。
その気持ちはよくわかる。
はっきり言って、他人に関与したくない。- 極限状態に達しようとしていた。
俺は俺で、連日寝てないせいで、- ブラインドタッチが全く出来なくなったり、動悸が起きたりと
身体的な障害も現れ始めていた。そして木村くんとの軋轢。- そろそろ限界だぞ・・・。
そんな時、- 事件は起きた。
- 379 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:12:38.38 ID:K32TwDYo
- 俺はもうとにかく睡眠を貪りたかった。
3時間で良い。睡眠を取りたい。
この時、俺は飯も食わず、仕事に没頭していた。- 本当に限界だった。過労死を頭に思い浮かべたものだ。
そんな時だ。
バイブ、携帯が鳴っている。
なんだ・・・このクソ忙しい時に・・・。
外に出て、電話に出てみた。なんだこの番号は。- 登録されてないじゃないか。
「マ男さんですか?」
聞き覚えのない声だ。
「お父様のお名前は、○○でよろしいですか?」
「えぇ・・・」
なんだよ・・・。
「今、○○病院におりますので、至急来てもらえますか」
え?
- 409 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 02:15:05.67 ID:xWCS3Hko
- そういう展開になるとは・・・
- 410 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 02:15:09.66 ID:9tRGgMIo
- もももももっももちゅちつうけえええええええええええ
- 427 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 02:18:33.62 ID:nWXYKBso
- あばばばばばばばば
- 428 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:19:04.78 ID:K32TwDYo
- 「はぁ?」
何言ってんのこの人・・・。- 俺は頭がぼーっとしていたので、幻聴かと思った。
「今日、救急車で搬送されました。お話すべきことがあるので、来て頂きたいのですが」
「何をおっしゃっているのかわかりません」
本当にコイツ何言ってんだ。父ちゃんは1週間前、- 元気だったぞ。
- 最近、食欲がないせいか、
- 痩せてたけど。
- 俺は頭がぼーっとしていたので、幻聴かと思った。
「ですから、救急車で搬送され」
説明を聞く俺。だが、全く理解できてない。- しかし、大変だということは分かる。
記憶が前後する。父ちゃんに何かあったのか・・・。- しかし、大変だということは分かる。
- 救急車・・・。
このキーワードだけは理解できていた。- その時、眠気が吹き飛んでいた。
「○○病院ですか」
「そうです、至急来てください」
仕事がある。
いや、そんなことどうでもいい。- 俺にはもう父ちゃんしか居ないんだ。
肉親は父ちゃんだけなんだ。
俺は貧乏だったが、タクシーを拾い、- 病院へと向かった。
- 458 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:24:08.44 ID:K32TwDYo
- 病室に早足で駆け込む。
父ちゃんが、力無い姿で横たわっていた。
そんなバカな。- なんで。
「マ男さんですか」
担当医らしき人が話しかけてきた。俺はネクタイもずれ、- 髪の毛もボサボサで情けない格好だった。
「重大な話があります。こちらへ」
訳がわからん。なんだよ、重大な話って。コイツバカじゃないのか。
「単刀直入に申し上げます。お父様は胃がんです」
終わった。
全てが終わった。
なんだよ、何が起きたんだよ。
俺が何をした? 俺そんな悪いことしたか?
本当に、本当に全てが終わった。
- 499 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:30:36.41 ID:K32TwDYo
- 「今朝、近所の方が回覧を届けに来た際、お父様が腹痛を」
何言ってんだ? 俺なんでこんなとこ居るんだ?- 仕事あるだろう。
凄い厳しいスケジュールなんだぞ。- こんな所に居たらダメじゃないか。
「手術するかどうか、告知するかどうか、遺族であるあなたの」
俺、ここ最近全然、家に帰ってないや。
父ちゃん、寂しがってるだろうな。俺、仕事がんばってるよ。全然辛くないよ。
「つきましては、ここの紙面にサインが必要で」
なんでだよ・・・。なんで、俺はこんな辛い目に遭わないといけないんだよ・・・。
俺、頑張ってるじゃないか・・・。親孝行させてくれよ・・・。
なんでだよ、何で俺から何もかも奪うんだ。まだ俺親孝行してないよ。
俺は壊れていた。
- 仕事あるだろう。
- 503 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 02:31:14.60 ID:444rWIco
- 遺族じゃねーww
- 509 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 02:32:04.42 ID:NVmNXsQo
- 親族の間違いだなwwww
- 533 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:40:28.65 ID:K32TwDYo
- ごめん。
×遺族 ○親族だったよ。
医者の話が全て終わった時、俺は一人でぼーっとしていた。
仕事による肉体疲労、人間関係からくるストレス・・・- そして、父ちゃんの胃がんで精神崩壊。
俺は、あらゆる意味で終わろうとしていた。
すると、携帯が鳴った。- リーダーだろうな。すぐ切ろう。
一人になりたいんだ。
「マ男くんか?」
藤田さんだ。
「何かあったのか?」
俺はこれを聞いた瞬間、全てが吹っ切れたかのごとく、- 泣いていた。
「父ちゃんが・・・父ちゃんが・・・」
ここから先は言葉が出ない。- しばらく経って、藤田さんが話し始めた。
「・・・分かった。リーダーには、私から話をしておこう。- 今は、気持ちを落ち着かせない」
「はい・・・ありがとうございます・・・」
電話を切った。
- そして、父ちゃんの胃がんで精神崩壊。
- 564 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 02:50:38.62 ID:K32TwDYo
- 結論から言おう。
父ちゃんは手術をして、胃の一部を切除した。
自覚症状が薄いらしく、早期発見が難しいという話だったが、- 手術は成功した。
俺はこの間、会社に行きながらもお見舞いに来たりしていた。
父ちゃんと会話が出来るようになった頃の話だ。
「人間、何が起こるかわからんなぁ」
「うん・・・」
「マ男、会社楽しいか?」
楽しくないなんて言えるわけがない
「楽しいよ。社会に出て良かった」
「そうか、ワシも嬉しいよ。社会には色んな人間が居るだろう」
「うん、本当にそう思う。その中で、藤田さんって人が居てさ」
俺は今まで、会社の話はほとんどしなかった。- 表面だけを話して、頑張ってるよ、楽しんでるよって
- ことだけを伝えていただけだった。
「凄い人だなぁ、その藤田さんってのは。きっとその人は、- 人生の中でも一度会えるか会えないかぐらいの人だよ」
「うん、出会いって大事だよね。別れもさ」
「そうだなぁ・・・。お前も母さんが死んでから変わったもんな」
俺はまだ頑張らないとダメだ。- こんな所で弱音を吐いちゃダメだ。
- 人生の中でも一度会えるか会えないかぐらいの人だよ」
- 590 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:00:10.87 ID:K32TwDYo
- 「マ男、会社に行かなくていいのか?」
「父ちゃんが心配だよ」
「バカだなぁ、お前は。ワシはな、お前が一人前になってくれさえすれば、- それだけで親孝行になるんだよ。
お前はワシの心配なんかせんでいい。出世して、嫁さん貰って、子供作ってくれさえすれば
ワシはそれだけで幸せなんだよ」
俺は泣きそうだったが、黙って頷いた。
親は偉大だ。- 偉大すぎる。
- いつまで経っても、手の届かない所に居る。
どうやったら、自分よりも子供の心配が出来るんだ。- 本当に尊敬する。
「仕事、大変だろうけど頑張れよ。辛かったら、やめて良いからな」
辛い。正直、もう俺は限界に近い。- だけど、まだ頑張らないとダメなんだ。
「うん」
病院を出て、会社に向かう俺。
何のために、俺は働いてるんだろう・・・。
父ちゃんをないがしろにしてまで、何で俺は働いてるんだろう・・・。
働いて働いて働いて・・・働き続けて、その先に何がある・・・。
だけど、まだ・・・まだ頑張らないとダメなんだ。
俺はまだ頑張れるんだ。
- 602 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:06:22.73 ID:K32TwDYo
- 会社に到着した俺。
元々厳しいスケジュールに加え、- 父ちゃんの件による精神的苦痛、お見舞いの件による時間の消費・・・。
いくつもの要因が重なり、俺のスケジュールはひどいことになっていた。
どうしようもない。はっきり言って、誰がどうあがいた所で、- 一人で消化するのは不可能だった。
「おい、マ男」
リーダーだ。
「スケジュールがマズイことになってるぞ。何とかできるのか?」
藤田さんから事情を聞いたのだろう。- いつもより、ずっと言い方が柔らかかった。
「・・・わかりません」
俺はスケジュールの事より、これから先をどうするかを考えていた。
すなわち、退職するか続けるかだ。
まだ俺は頑張れる。それはあった。- だけど、それ以上に、父ちゃんと一緒に
- 居る時間の方が大事だと思えたのだ。
・・・平成の孔明に、藤田さんに相談しよう・・・。
- 父ちゃんの件による精神的苦痛、お見舞いの件による時間の消費・・・。
- 615 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:12:09.12 ID:K32TwDYo
- 「すいません、藤田さん」
「うん?」
「少しよろしいでしょうか」
藤田さんのスケジュールも当然厳しい。- 今思えば、よくこんな行動が取れたものだ。
「あぁ、いいよ。応接室にいこうか?」
「はい、お願いします」
それでも、快く引き受けてくれた藤田さん。
「このまま働き続けることに、疑問を持ちました・・・」
事情を説明する俺。それに真剣に耳を傾け、- 難しい顔をする藤田さん。
「難しい問題だね」
「・・・」
あなたの指示が欲しい。- 俺は自分で行動する力を失っていた。
「ごめん、マ男くん・・・。今の私では、今の君には何も言えない・・・」
・・・え?
「これは、君自身が考えるべき問題だ。- 私は君の神じゃない。君の運命は、君が決めなさい」
そんな。
藤田さんは、始めて俺を突き放した。
- 622 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:14:06.43 ID:QQEFE5go
- うん。そりゃそうだ。
助言が欲しいマ男の気持ちも分かるが、
マ男の人生を左右する問題に安易に口を出さない藤田さんはやはり神。
- 631 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:18:03.35 ID:K32TwDYo
- 藤田さんが部屋を出ていく。
待って、- 待ってくれ。
- 自分で考えることができないから、
- あなたを頼ったんじゃないか。
それなのに、それなのに何でだ。
俺は利己的にしか物事を考えることができなくなっていた。
スケジュールから逃げたいという気持ち、- 俺の責任じゃないという現実逃避。
全てが絡み合い、俺は苦しんでいた。
「失礼します」
誰だ。俺は絶句した。
「マ男さん、大丈夫ですか」
木村くんだった。- なんで君が来るんだ。
「マ男さん、会社やめるんですか?」
・・・。
「僕から逃げるんですね、マ男さん」
ケンカ売りに来ただけか、こいつは・・・。
- 660 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:24:04.90 ID:K32TwDYo
- 「僕の実力が怖いんだ」
好きに言ってくれ。- 今、俺は君のことなど頭に無い。
「ずっと前、僕言いましたよね。いずれリーダーになるって、出世するって」
言ったな。- あの時は、君の野心に驚いたよ。
「あの時のマ男さんの顔、今でも覚えてますよ。何言ってんだコイツって顔でしたよね
僕の周りはみんなそうです。僕の言うことに、いちいち驚く。- 僕は当たり前の事しか言ってないのに」
そうか。もう俺は君に呆れたよ。
「だけど、マ男さんは、僕よりも先にリーダーになっていた。実力は僕より下なのに」
失礼な奴だな。そうかもしれないが、- それは言うべき所じゃないだろう。
「なのに会社やめるんですか? 力は無い。だけど、僕より先に出世した経験があるのに。
そんなの勿体無いですよ」
「・・・そうかな」 - 今、俺は君のことなど頭に無い。
-
「マ男さん、今のスケジュールでしたら大丈夫ですよ。- 僕が引き取って、今なんとかやってます」
え?
- 665 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:25:24.80 ID:QQEFE5go
- ちょwwwwwwwwwwwwww木村なんという内助の功wwwwwwwwww
さり気なくマ男が抜けた分やってるとかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
- 666 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:25:24.96 ID:PePHUXI0
- なななななななにい!!
- 729 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:37:26.40 ID:QXT555.o
- 木村「べっべつにマ男のためにやったんじゃないんだからねっ」
- 696 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:30:42.11 ID:K32TwDYo
- なんだって?
「意味がよくわからない」
「マ男さんの仕事を、僕がやってあげてるんですよ」
「何で木村くんが」
「藤田さんが、この開発室の人間は仲間って言ったじゃないですか。- 仲間なら、助けるのが普通でしょ」
何言ってるんだ? よく意味がわからない。- 木村くんだろう、君は。
「まぁ、あと上原さんも空いてたので、あの人にもやって貰ってますけどね。- あ、もちろん藤田さんもですよ。
他の人は戦力にならないので、何もしてないですが」
藤田さん、突き放すだけ突き放しておいて、- 何をやってるんだ・・・。
「だから、今回のスケジュールは気にしなくて良いです。- 僕は僕で、ワンランク上の仕事にあり付けましたし。
あとは、マ男さんが立ち上がるだけです」
そう言って、応接室を出て行く木村くん。
なんという大器か。
- 僕は僕で、ワンランク上の仕事にあり付けましたし。
- 730 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:38:01.76 ID:K32TwDYo
- 俺はこんな所で何やってるんだ。
確かに精神的なダメージは大きい。だが、今抱えている仕事を- こなすまでは辞めることなど許されない。
俺の代わりに、多くの人が体を、精神を、- 時間をすり減らして動いてくれてるんだ。
当の本人であるこの俺が、何をやってるんだ。
俺は妙に焦り、早速仕事に戻った。
「おーおかえり、マ男くんww 長いトイレだったなww ケツふいた?ww」
井出だ。いつもはムカつくけど、- 今回はありがとう。
「おい、マ男、無理するなよ。お見舞い行けよ」
大丈夫です。- このプロジェクトだけは絶対に仕上げてみせる。
藤田さんを見る。- 軽く頷いた。
- 俺はそれを笑顔で返す。
「マ男さん、早く仕事やってくださいよ。僕だって暇じゃないんですよ」
わかってる、- ありがとう、木村くん。
俺は、またもや人との出会いに助けられていた。
まだ俺は頑張れる。こんなに素晴らしい人たちに囲まれてるじゃないか。
このプロジェクトだけは、絶対に何としてもやり遂げてやる。
- こなすまでは辞めることなど許されない。
- 756 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:41:47.62 ID:gDwnOKQo
- 限界どころかブラックでもないようなwwwwwwww
てか竹田がいないww
- 759 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:42:07.95 ID:NVmNXsQo
- 竹○・・・?はて、誰のことだ??
- 775 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:45:27.24 ID:K32TwDYo
- 10月末。
「おい、今日が納期だぞ、お前ら」
「やったるwwwwwwww俺やったるwwwwwwww」
みんなで協力し合い、プロジェクトを進めていく。
父ちゃん、お見舞いに行けなくてごめん。- だけど、俺は自分でやるって決めた事は、
- 最後までやりたいんだ。
いつもいつも挫折して、すぐに諦めるバカ息子だけど、- これだけはやりたいんだ。
「キムちゃーん、これ無理だよーやってー」
後輩にたかる井出。
「めんどくさい人だな。なんでこんなのが出来ないんですか」
井出を押しのけ、作業を進める木村くん。
すると
キュピーンという音が鳴った。
「この感じ・・・ニュータイプか!?」
「シャア!」
「竹中さんと井出さん、遊ばないで仕事してください。もう助けませんよ」
「す、すいません」
そして
午前4時42分(確か
プロジェクト完遂!!(まだ続くよ
- 799 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:51:46.37 ID:K32TwDYo
- やった、ついにやった!
史上最強のデスマを打ち倒した!!
俺たちは狂喜乱舞のごとく喜んでいた。- みんながみんな、協力し合い、始めて成功したのだ。
それぞれがそれぞれの個性、適正を活かし、全てを完了させたのだ。
俺たちは感無量だった。
「やっぱ出来るじゃないか、僕の言った通りだ」
「木村、お前凄い奴だな」
「言われなくてもわかってますよ」
生意気な口を叩いているが、その顔は達成感で満ち溢れていた。
みんな、本当に良く頑張った。これ以上無いほどにだ。
だが・・・
11月12日(スレを立てる12日前)
事件は起きる。
- 824 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 03:56:14.88 ID:K32TwDYo
- 「おい、お前ら緊急会議だ」
む・・・。今日は月曜だぞ。いつも会議は火曜なのだが・・・。
「えー・・・」
リーダーが言葉を詰まらせた。
「すまんすまん、遅れたよ」
社長がやってきた。いつもなら社長は会議に同席しない。
何か本当に重大なことが起きたのか。
まさか、倒産か?
あれだけ頑張ったのにか・・・?
「君達に、話さないといけないことがあるんだ」
なんだ・・・。せっかく職にあり付けたのに、- 退職だなんて勘弁だぞ・・・。
「来月、藤田くんはこの会社を辞めることになった」
今なんていったこのおっさん
- 836 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:57:23.10 ID:4.5A2Kwo
- ああ、なんだ
倒産じゃないのか
やめるだけか
なんだ、そうか
いやー、はっはっは
・・・・って、えぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええ
- 837 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 03:57:22.75 ID:28ziYs2o
- ( ゚д゚ )
- 868 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 04:01:50.40 ID:K32TwDYo
- ハァ?
何? 何て言った?
「伝えるのが遅れてすまない。半年前ほどから、すでに決まっていたのだが」
「ちょっと待ってください!」
俺は声をあげていた。
「藤田さんがなんですって!?」
「マ男くん・・・」
「藤田さんが、藤田さんが何だって聞いてるんですよ!」
「・・・辞めるんだよ、マ男くん」
何を言ってるんだ。何を言ってるんだ。- 何を言ってる、このおっさん。
本当に何言ってんだ。
「藤田さん、辞めるんですか!?」
俺は藤田さんに言った。必死の形相だったと思う。
「・・・あぁ」
そんなバカな。何を言ってるんだ、この人たちは。
理解できない、わからない。
何が起きてるんだ。今、この場で何を話してるんだ。
俺は気が動転していた。
「藤田さん、僕から逃げるんですか!」
- 906 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 04:08:57.78 ID:K32TwDYo
- 木村くんが叫んだ。
「僕が怖いんだ! 今から追い抜かれるから、だから逃げるんですか!」
「・・・」
何も言わず、じっと木村くんを見つめる藤田さん。
何を言ってるんだ・・・。何だよ・・・何で・・・。
「木村、落ち着け」
リーダーがたしなめる。- その手を振り払い、木村くんが身を乗り出した。
「僕が怖いんだ」
「・・・」
口を開かない藤田さん。なんで何も言わないんだ・・・。
何か言ってくれ・・・。逃げない、最後まで君と張り合うつもりだ、って。- 木村くんを最後まで抑えるんだって。
「じゃあ僕の勝ちだ。やっぱり藤田さんも、僕には勝てないんだ。僕が一番仕事ができるんだ」
声に力が無い。- 本心じゃない、誰が聞いても分かる。
「木村・・・!」
リーダーが語気を強める。
「フンッ」
「木村ぁ!! 座れぇ!!- 社長が話できねぇだろうがっ!!」
戦慄が走る。
- 909 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 04:10:02.57 ID:X5dOskAO
- リーダーがまともな理由でキレたのはじめてじゃねぇか?
- 914 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 04:10:26.66 ID:.LcO8io0
- 木村の影響でリーダーが常識人に見える不思議
- 955 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 04:19:40.22 ID:K32TwDYo
- 室内が静まり返り、
- 社長が口を開いた。
「何故早めに話さなかったのか。これは、藤田くんの希望でね。- 退職することもまだ未決定ではあったんだが
今回のプロジェクトを完遂できた時に正式に決定しようと。そういう話になってたんだよ」
聞いてない。そんな事、俺は聞いてない。
「あとは、藤田くんから・・・」
藤田さんが静かに頷く。
「急なお話、本当に申し訳ありません。- 一身上の都合により、退社せざるを得なくなりました。
この会社で、私は多くのことを学びました。最後の1ヶ月、短い間ですが」
藤田さんは、何故か俺の目だけ見ようとしない。- なんでだ。
- 何でですか。
「悔いの無いよう、最後までやり切ろうと思います」
俺は耐え切れずに泣いてしまった。
だけど、誰も突っ込まなかった。- みんな同じ気持ちなんだろうか。
俺の中で神で孔明で、人生で最も尊敬できる人で・・・- 藤田さんが、会社をやめる・・・。
こんなひどい現実、あっていいのかよ・・・ - 社長が口を開いた。
-
- 59 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 04:34:19.10 ID:K32TwDYo
- 『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界もしれない』
スレタイの意味・・・
それは、木村くんの下克上でも、父ちゃんの病気でもない。
藤田さんが、会社を去る・・・。- まさにこれこそが限界だったのだ。
11月23日(スレ立て前日)
「マ男くん・・・今日、お昼いいかな・・・」
「・・・はい」
例の退職宣言以来、開発室内は生気が抜けたかのようになっていた。
俺はそれ所の話ではない。
父ちゃんの病気、藤田さんの退職。俺を支えていたものたちが、- 一気に消え去ろうとしているのだ。
限界だ。限界が襲ってきている。
そして、昼休みがやってきた。
「すまないね、マ男くん」
・・・。
「君にはもっと早く言うべきだったのだが・・・」
いくらでも、いくらでも言う機会はあったじゃないですか。
「春を・・・覚えているかい」
「えぇ・・・」
「あの時、君に話そうとは思ってたんだがね・・・」
木村くんと話をしたあの日だ。- リーダー補佐の話をしたあの日。
「タイミングが掴めなくて、今のような状態になってしまったよ。本当にすまない」
もう済んだ事です。何をやっても、もう全てが遅いです。
「・・・君には本当の事を話そう」
本当のこと・・・?
- まさにこれこそが限界だったのだ。
- 62 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 04:35:43.30 ID:N2dOF2wo
- 勇!
トリップ トリップ
- 82 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 04:41:30.88 ID:K32TwDYo
- すまん・・・。トリップ忘れてた・・・。
「以前、君が精神的に参った時、私の過去を話したよね」
「えぇ・・・」
「内容は覚えてる?」
当然だ。彼女が死に、NEETになってしまった藤田さんだったが、- 彼女の両親からの手紙を機に働きだす。
これは今でも俺の糧となっている。誰が忘れるものか。
「今回の退職は、それに絡んでいてね」
なんだと?
「結論から言うと、ヘッドハンティングだよ。俗に言う引き抜きだ・・・。
だけどね、私は引き抜きなんかには動じなかった。ただの引き抜きならね」
ただの・・・何かあるのか・・・
「派遣社員の中西さんが居ただろう」
「えぇ」
「彼女は、今○○に勤めていてね」
中西さんが、あの人が手を回したのか?
「もう分かると思うが、あの人の推薦で引き抜きが来たんだよ。- だけど、私はそんなものじゃ動かない」
一体、一体、何が藤田さんを動かしたっていうんだ。
- 115 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 04:47:06.85 ID:K32TwDYo
- 「じゃあ何が私を動かしたのか」
沈黙。
「・・・中西さんの勤めている会社が、私の元彼女の勤めていた会社なんだよ」
俺は時間が止まった。
「運命というのは本当にあるのかもしれない。- 私は中西さんに過去を話してないし、君も話してないだろう」
時間が動かない。なんだこれ・・・。
「私は居ても立ってもいられなくなった。そして、社長に事情を話し」
藤田さん、あなたは本当に神に選ばれた人じゃないのか。
「正直に言おう。この退職は、私のわがままだ」
- 155 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 04:58:40.24 ID:K32TwDYo
- ここから先は、何を話していたか覚えてない。
俺は呆気に取られて、はぁ? みたいな感じだった。
「すまないね。だけど、私も時期は見計らったつもりだ。
君は立派に成長し、木村くんという私を超える逸材も入ってきた」
それは違う。俺はまだあなたが必要だし、- 木村くんはあなたには及ばない。
「マ男くん、君は私を尊敬してくれてると思う。- 3年間、共に過ごした中で私はそれを感じた。
君の中で、私の存在はどれほど大きいだろうか。それは私にはわからない」
取り返しのつかないほど大きい、まだ俺には藤田さんが必要だ。
「だけど、私は思うよ。私の力が100あったとしよう。この100の力は、とても大きい。
だけど、一つなんだよ。たった一つの100だ。- それに対して20の力が5つあったら・・・それは、100を超えると思わないか?」
超えるわけがない。藤田さんという存在は、唯一無二なんだぞ。
「前回のプロジェクトは、まさにそれを体現化したものだった。- 私は思ったよ。これなら安心して去れると」
一呼吸置く藤田さん。
「私のあとは、君が継ぐんだ」
そんなバカな
- 189 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 05:06:26.90 ID:K32TwDYo
- 「無理ですよ」
俺は言っていた。そうだ、無理だ。
出来るわけがないだろう。- 俺が、俺ごときがこんな立派な人のあとを継ぐ?
何こんな時にギャグをかましてるんだ。
-
「君なら出来るよ。君はもう私を超えている」
口から出まかせを言うな。どこをどうひっくり返したら、そうなるんだ。
「そろそろ、会社に戻ろうか」
そう言って席を立つ藤田さん。- 待ってくれ
俺が藤田さんの後を継ぐ・・・?
何を言ってるんだ・・・。冗談も程ほどにしてくれ・・・。
俺なんかに務まるわけがないだろう・・・。
父ちゃんの病気、藤田さんの退職宣言、- そして・・・後継者というプレッシャー。
限界だ。もう俺は限界だ。
11月24日 21:33:07:44
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』スレッド作成。
ここから、全てが始まる。
- 192 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:07:22.61 ID:.LcO8io0
- なるほど…
- 196 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:07:31.64 ID:cDXUMuU0
- そういう事だったのか…
- 206 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:08:44.15 ID:VxZVnjA0
- >「これなら安心して去れると。」
平成の孔明、藤田さんにここまで言わせたんだ。
自信持て、マ男。
- 234 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 05:15:41.44 ID:K32TwDYo
- 何のためにスレッドを立てたのか。
確かに俺は限界だった。このスレッドを立て、全てを書き終えた時、- 俺は退職しようと心に決めていた。
伸びても、伸びなくても、それは変わらない。
結果的にスレは物凄い勢いで伸び、- パー速に移住するほどになってしまった。
そして、その中で俺への励まし、心配、叱咤。- 色々なレスが俺に向けられて書き込まれた。
ブログのコメントは、続きを書いてくれ、という内容ばかりだった。
俺は今まで、誰からも必要とされない、- 居なくなっても誰も悲しまない、くだらない人間だと思ってたんだ。
だけど、このスレを立てた事で、- 俺はみんなから励まされて、
- 心配されて、
- 叱咤されて・・・
たった一人の力は確かに小さいかもしれない。- だけど、それが何十、何百となったら?
その小さな力が集まって、大きな一つの力となったら?
俺は奇跡を信じる気になったよ。
だって、スレッドタイトルが変わるんだもの。
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』
が
『ブラック会社に勤めてるんだが、- まだ俺は頑張れるかもしれない』
に。
次のレスか、次の次のレスでラストになる。
- 237 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:16:21.80 ID:p4qV7GAo
- なにこのうまい〆方wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
- 239 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:17:02.31 ID:4.5A2Kwo
- 何度泣かすつもりだ・゜・(ノД`)・゜・
- 263 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:20:35.97 ID:.swh7lQo
- 〆方上手すぎwwwwwwwwww
なんか凄い希望を持ててきた。ニート脱出頑張ってみるよ。
- 288 名前:マ男 ◆kmd7lCK4/M:2007/12/15(土) 05:30:18.72 ID:K32TwDYo
- このスレを見てくれてる人の中には、いろんな人が居るだろう。
学生、社会人、NEET、親、子、男性、女性・・・。
俺が想像も出来ない数の人が見てくれてると思う。- そう思ったら、力が湧いてくると思わないか。
俺はこのスレを立てたことによって、みんなに救われたよ。- 本当にありがとう。
そして先週の金曜、藤田さんと交わしたやり取りを、ここに記そうと思う。 - そう思ったら、力が湧いてくると思わないか。
「マ男くん、君はもう私を超えているよ。君一人の力では、そうじゃないかもしれない。
だけど、木村くんの信用は今では君が一番だし
井出さんやリーダーも、君の事を影で認めている。- 私にしょっちゅう、言ってくるんだからww
上原さんも、竹中くんも、みんな、君を頼りにしてるんだよ」
「私は、社長に言っておいた。君をリーダーにすれば、- 私を失う事なんて、石ころを捨てるのと同義だと。
君は私が去っていく日、リーダーに任命されると思う。- 君は悩むだろう。苦しむだろう。だけど、私を信じて受けてみて欲しい。
そのために、私はリーダーになるのを断り、3年間ずっと君を育ててきたのだから」
俺たちは、藤田さんという一つの大きな力を失った。
だけど、その代わりに俺たちは、結束という何物にも変えがたいものを手に入れたよ。
藤田さんは、今月末で去る。そして俺はリーダーに任命されるだろう。
もし、このスレを立てていなければ、俺は受けなかったかもしれない。
だけど、このスレを立てたからこそ、俺は受けることにした。
藤田さんの言葉の意味を、みんなが教えてくれたのだ。ありがとう。
そして最後に、ありがとう、2ちゃんねる。
- 私にしょっちゅう、言ってくるんだからww
-
第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』
及び
『ブラック会社に勤めてるんだが、- まだ俺は頑張れるかもしれない』
完
- 289 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:30:42.54 ID:xL.PRo2o
- 完結!!乙!!
- 296 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:31:49.06 ID:kHTg0tYo
- 勇、乙
- 298 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:31:50.64 ID:UuicapE0
- マ男乙
- 314 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:33:29.59 ID:6DIMOYE0
- おつかれさまでした!!!
- 315 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします:2007/12/15(土) 05:33:30.20 ID:L.UdhsAO
- 間男乙。
ほんとにお前は自分を過小評価しすぎだ。
もっと自信を持っていいと思うぞ。
頑張れ。間男。
- 821 :マ男 ◆kmd7lCK4/M [sage]:2007/12/15(土) 06:34:32.74 ID:K32TwDYo
- 眠いので今日はもう寝るよ。
起きたらもう俺はただの名無しだ。
- 長い長い話だったが、最後まで聞いてくれた人、ありがとう。
-
みな達者でな!
- 826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2007/12/15(土) 06:35:24.79 ID:ioBJRjco
- 長い間お疲れ様。
もしかしたら、仕事で会うかもね。
- 832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2007/12/15(土) 06:36:03.85 ID:xL.PRo2o
- おやすみマ男。とても楽しかったよ。
- 833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2007/12/15(土) 06:36:13.42 ID:3qXKF2Eo
- 乙!
今まで本当にありがとう!
またどこかで・・・・・・・
-
- 837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2007/12/15(土) 06:36:42.26 ID:4.5A2Kwo
- 長い間お疲れさま
これからも頑張り過ぎないように頑張れよー
- ※おまけの裏話?などがある雑談スレッドはこちら・・・
- http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1197117048/
この記事へのコメント
-
名前:名無しさん #- | 2007/12/15(土) 22:28 | URL | No.:444スレタイ空白には意味があったんだな、藤田さんがリーダーをやらなかった事にも・・・
ドラマみたいな展開で楽しかった
藤田さんとこれからリーダーになるマ男にもこの先頑張って幸せになってもらいたい
管理人さんもアップお疲れ様
俺も月曜日と戦うのを頑張るよ -
名前:名無しビジネス #- | 2007/12/16(日) 01:04 | URL | No.:448完結したか。管理人もお疲れ。このブログ人は少ないみたいだけど見やすいしネタもいいからこれから伸びると思います
-
名前:名無しビジネス #Izrk.blM | 2007/12/16(日) 01:10 | URL | No.:449これは是非本にして欲しいな。
他のどんなスレの書籍化より売れると直感する。
特に来年大学4年生の俺にはバイブルにもなりえそうな話だ。 -
名前:VIPPERな名無しさん #- | 2007/12/16(日) 13:29 | URL | No.:458藤田さんの最後の言葉に鳥肌が立ったわ
-
名前:名無し@こっぺぱん #- | 2007/12/16(日) 21:06 | URL | No.:465まとめ乙でした
書籍化されたらガチで買うよ -
名前:名無しビジネス #- | 2007/12/20(木) 03:34 | URL | No.:511ありがとう。マ男
-
名前:名無しビジネス #- | 2007/12/22(土) 03:58 | URL | No.:541…?
読書家の仕込んだ釣り、に思えるんだが。
-
名前:名無しビジネス #- | 2007/12/31(月) 09:11 | URL | No.:663勇、これからもがんばれ!!
藤田さんは今日で退職だね・・ -
名前:名無しビジネス #- | 2008/02/16(土) 08:47 | URL | No.:3105今どうしていますか。
お元気ですか。
今はどんな仕事ですか。
近況を知りたいです。 -
名前:名無しビジネス #- | 2008/08/19(火) 18:29 | URL | No.:28910これは…!!
非常に面白かった。乙! -
名前:名無しビジネス #- | 2008/12/28(日) 07:32 | URL | No.:53159感動しました
-
名前:名無しビジネス #- | 2009/03/12(木) 21:11 | URL | No.:67090これが中卒が書く文章かよ
脚本家ってレベルじゃねーぞ! -
名前:名無しビジネス #- | 2009/03/26(木) 22:54 | URL | No.:70478不朽の物語だな。社会人になる前にこれに出会えてよかった。
-
名前:名無しビジネス #- | 2009/05/21(木) 12:56 | URL | No.:82065※7はガチで死んで言いと思う。
マジで涙腺きたわぁ…
クラナド以来だな -
名前:名無しビジネス #- | 2009/07/02(木) 20:42 | URL | No.:92827※14
クラナドオタ騙ってネガキャンするお前こそ新で欲しいね -
名前:名無しビジネス #- | 2009/11/29(日) 05:58 | URL | No.:135954おしっこちびりそう
仕事のことで悩んでたけど、
自分ももう少し頑張ってみようと思ったよ。
最後まで読んじゃって良かった
よし 寝る -
名前:名無しビジネス #- | 2011/11/14(月) 05:37 | URL | No.:437877良いものを見せて貰いました。
お疲れさまでした。 -
名前:名無しビジネス #- | 2012/03/18(日) 08:30 | URL | No.:501495読み始めたら、オールしててびびった。
是非リアルタイムで見たかった。
今もにちゃんで名無ししてるといい。
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