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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:07:21.22 ID:txeY88/m0
― 一 ―


冬が来ていた。


僕が住んでいた田舎は、今頃雪に包まれていているのだろうか。
今歩いているこの街は、まだ12月の初旬だというのに赤と緑の彩りが目立つ。
クリスマス商戦か。きっと僕は今年の聖夜も独りで過ごすだろうから、虚しいな。
四畳半のアパートで、ペンや筆を取って淡々と絵を描く。そう、仕事をする。
時間はいつものように流れるだろう。
僕の部屋はテレビとかが無いから、それは尚更のことで。

ため息は灰色の空へと消える。
帰路を辿る僕のダッフルコートのポケットが小さく揺れた。
誰からの着信だろう。


( ^ω^)「おいすー。ブーンだお」

「ああ内藤さん? 三つ目のカットまだかなあ…」

(;^ω^)「あうあう。明日までにはきっと間に合いますお」

「頼みますよー本当に」




不満そうな声を僕の耳に残して、出版社の男は電話を切った。




3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:09:37.23 ID:txeY88/m0
高校を出て、僕は東京の芸術大学に通った。
絵を描くことは好きだったけど、それでメシを食べていきたいと思い始めたのはいつ頃からだろう。
卒業して数年。細々とした生活が、ずっと続いている。
だがなんとか野垂れ死にまでには至ってない。
男盛り。このままでいいのだろうか? ふと葛藤するときもある。
だけどそんな時は、決まって田舎の祖父の声が頭の中で再生される。「高望みはいかん」


( ^ω^)(YanYanのカットが… あと数枚で…)



雑誌の挿絵、カット、版下屋の下請け。何でもやる。
自分が芸術家だという意識はまったくない。要するに単純に絵を描くことが好きなだけ。
だからどこかの高尚な人みたいに、「俺の描きたいものはこんなもんじゃないんだ!」 
なんて悶々とすることもない。
とはいえ、上京して数ヶ月の間は確かに夢と情熱に溢れた青年だったさ。

だけど余計な欲も持たなくなってから、結局貧乏暇無し。忙しい毎日が続いていた。
田舎で過ごしたあの日あの日が、どんどん遠退いていく。
時々懐古したくなる気分になっても、今一つ昔のことを思い出せないのが辛い。
そう、全ては過去へと流されていく。



とある少女を除いては。



 
 

 
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:10:42.76 ID:txeY88/m0
灰色だった空に、蒼色が少しずつ染みてきた。
最近は、日が益々短く感じてきた気がする。街には忙しなく歩く人々で溢れている。
僕もその中の一人だ。特に予定があるわけではないのに、その歩みはいつもよりハイペース。


( ^ω^)(ああ、もうこんなに暗くなっちまってるお)

( ^ω^)(早く帰らなきゃな)


雑踏に紛れてふと考える。
いつから僕は彼らと同じ歩幅で歩けるようになったのかな、と。




街の中心から外れ、気付けば小道を歩いていた。
古い街灯が、道を心許なくチロチロと照らしている。
次の曲がり道を左に行けば、僕のアパートが見えてくる。辺りは随分暗くなって、
白い息がよく目に見えた。
角まであと数メートル。その時だった。僕の視界にとある人物が飛び込んできた。


(;^ω^)「―――!」





 
 

 
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:11:39.07 ID:txeY88/m0
染めてもいないのに、鮮やかな栗色をした髪の毛。
緩やかに、そして柔らかく癖っ毛になっているのが、子供の頃から相変わらずだ。
田舎に降り積もる雪のように真っ白な肌に、赤くてキュッと締まった唇。

角から少しだけ覗かせる横顔しか見えないけど、わかる。

間違い無い、あの子は。



そう思って駆けて行った瞬間、彼女は目の前から突然姿を消した。
高速でどこかへ移動してしまったという表現の方が正しいか。
だけど、突き当たりまで進んだ所で左右を見渡してみても、姿は見えなかった。
遠ざかる小さな後ろ姿さえ見えなかった。何故。



(;^ω^)(僕と目が合った瞬間、ハッとした顔をしてた) 

(;^ω^)(僕を見て逃げたお? なぜなんだお?) 

(;^ω^)(せっかく会えたのに……) 


―――ツン。





 
 

 
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:12:50.46 ID:txeY88/m0
窓からぼんやり路地を眺める。
野良猫が何かを咥えながら、飄々と歩いていた。


( ^ω^)(あの道に、確かにあの子はいたんだお。立っていたんだお)



埋もれていく記憶の中で、唯一今でも頭の中の一部を占めている少女。
ツン。ちょっと我侭だけど、本当は優しい女の子。
4歳年下で、でも近所には彼女しか子供がいなくて、いつも遊んでいた。

ふと僕は、記憶のとある1ページを開いた。


( ^ω^)(あれは隣村のドクオと山登りに行ったとき……) 


―――――

―――

――

 
 








 
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:13:49.14 ID:txeY88/m0
ξ;゚⊿゚)ξ「まってよぅ、ドクオ~」

( ^ω^)「ツンがつかれてるお。ここらで一休みしたほうがいいと思うお?」

('A`)「はやくしねーと日が暮れちまうんだよ!」

('A`)「グズグズしたやつはおいていく!」


ξ;⊿;)ξ「もー あるけなーい。やだぁー」

('A`)「なに泣いてるんだよバカ! やまのぼりしたいって言ったのツンちゃんだろ!?」

('A`)「もみじがりしたいっていったの、ツンちゃんだろ!?」

ξ;⊿;)ξ「うわぁぁああん」



( ^ω^)「……」






 
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:14:29.08 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「乗るお」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

( ^ω^)「ぼくがおぶってってあげるお。ほら、乗って」

('A`)「おめーよー。そんなことしてたら、こしくだけちまうぜ?」

(*^ω^)「だいじょうぶだお!
       ぼくとツンちゃんはけっこんするから、これくらいのくろう”へ”でもないお」

( ^ω^)b 「男は女をまもらなきゃいけねぇってオヤジがいってたお!」

ξ ///)ξ「…」

(;^ω^)「あれ? どうしたお?」






 
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:15:14.91 ID:txeY88/m0
ξ#゚⊿)ξ「ブーンのばーか!  
      べ、べつにおぶってもらわなくたっていいもん!」

ξ#゚⊿゚)ξ「ツン、まだまだあるけるもん! ほら!」

('A`)「おーおー、その元気はどこからわいてきたのかね」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさいっ! ほら二人とも、いくよ!」


(;^ω^)(ツンちゃん…)




――

―――

――――




 
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:16:22.99 ID:txeY88/m0
結局もう数十分歩いたら、ツンは完全にへばってしまった。
悔しそうに僕の背中で泣いていたっけ。
でも僕がツンの代わりに拾った綺麗な紅葉を差し出すと、すぐ笑顔になっていたなあ。





( ^ω^)(”男は女を守らなきゃいけない” か)

( ^ω^)(ちゃんとそう出来るようになったら、
      連絡するって村を発つ日に約束したのに)

(  ω )(君はいつまで経っても僕の元へ来ない)


やっぱり僕のことなんて忘れているのかな。
僕のことなどほっといて、今頃僕の知らない街で、知らない生活をしているのかな。


だとしたら、あの曲がり角で目にした姿は何だろう。
この瞳に焼きついたツンの大人になった姿は何だろう。

 
 





 
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:17:36.04 ID:txeY88/m0
物思いに耽る僕を連れ戻すかのように、
テーブルの上で携帯電話がカタカタと震えた。青いランプが点灯している。
しぃからの着信だ。


( ^ω^)「おいすー。ブーンだお」

(*゚ー゚)「もう! なんでさっき出なかったのよ」

(;^ω^)「あ、あれ? 電話したお?」

(*゚ー゚)「…十分くらい前にね」

(;^ω^)「全然気付かなかったお」


コートの中に携帯を入れっぱなしにしていたから、
バイブレーションに気付かなかったのだな。と僕は思った。
彼女はリズムを崩すことなく、流れるように話題を振ってくる。職場のこと、思い出話、近況報告……


楽しく会話をしている内に、ツンの一件は暫し忘れることができた。





 
 

 
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:18:52.22 ID:txeY88/m0
(*゚ー゚)「ねえ」

( ^ω^)「なんだお?」


(*゚ー゚)「明日、喫茶店で会えないかな?」

( ^ω^)「OKだお」


(*゚ー゚)「それじゃあ、いつもの場所で…」

( ^ω^)「うん、だお」



「おやすみ」と一言彼女が優しく呟き、通話は終了した。 
他人から見ると誤解されるような節もあるが、僕としぃは未だ恋愛の関係を持ったことはない。
「良い友達」として付き合っている。
大学で出会った時から、互いの「好きだ」という感情をふと感じるときもあった。
だけど、中々それを口には出さない。
僕には田舎に残したツンがいたし、彼女もそれを知って遠慮しているのだと思う。

 
 




 
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:20:03.14 ID:txeY88/m0
しぃにツンの話を初めてしたときの、ちょっと残念そうな顔が忘れられない。


(*゚ー゚)「ふふっ…… 青春だね」


あの時のしぃの顔。
田舎から出てきたばかりの僕を、
”都会”という世界にこれから引き摺り込むぞと言わんばかりの魅力で溢れていた。


( ^ω^)「だけどダメだお ダメダメお~ しぃとくっついちゃ~」


自前の鼻歌を口ずさみながら、椅子に座り直して絵筆を握る。
雑誌のカットを、完成させなくちゃ。

 
 




 
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:20:51.43 ID:txeY88/m0
― 二 ―


ξ゚⊿゚)ξ「ブーンはさ、高校出たらどこへいくの?」

( ^ω^)「うーん… 僕は絵が描きたいから、東京の絵の学校にいくお」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、ブーンは長男でしょ? 家を継がなくて、いいの?」

( ^ω^)「構うもんか! やりたいことをやるお。
      親がどれだけ反対しても、勘当覚悟で僕はこの村を出ていくお」

(*^ω^)「都会で一旗上げるんだお。そしたらツンも東京に来い!
      二人で暮らしていくんだお。ふひひひwww」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私も東京の大学にいかなきゃ…」

( ^ω^)「その前に、ツンは高校受験のほうが先決だお」

( ^ω^)「授業で分からないところはあるお?」


ξ;゚⊿゚)ξ「もう沢山ありすぎだよ~」

(;^ω^)「オゥフ。どれ、僕に任せてみてなさい」

ξ*゚⊿゚)ξ「はい!」





 
 

 
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:22:12.78 ID:txeY88/m0
( -ω-)「バカ… そこはxに代入するんだお…」


『次はー 九段下ー 九段下ー』


結局、ほぼ徹夜で仕事を片した。
すっかり眠りの世界へ入った僕を、駅員の声が起こす。
窓越しの太陽が、痛烈に眩しい。
僕は電車から降りて、駅の出口を通り、出版社を目指す。


( ^ω^)「さて……。いざ行かん」
 
 

 





 
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:23:03.10 ID:txeY88/m0
「―――うん、うん。いつも通り、いいね」

( ^ω^)「有難うございますお」

「また次も機会があったら、宜しく」

( ^ω^)「いつでも喜んで請け負いますお」


頭に手を当てて、出版社の人にヘコヘコとする。お礼を言う。
自分が社会の一員となっていることを、ふと自覚する時。
会話の中で、原稿料を渡される。さあ、これで何日食べていけるかな。そんなことを思った。


「内藤君、ところでさ」

( ^ω^)「はいですお」

「君に女性の絵を描かせると、どうもみんな同じ顔に見える」


(;^ω^)「え? そうですかお?」




 
 

 

 
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:23:55.39 ID:txeY88/m0
「誰かモデルがいるのかい?」


机に無造作に敷かれた自分の絵に、僕は視線を配らせた。
確かに、どの女性もちょっと似偏った顔のパーツの配置をしている。
うん。正直に認めよう。これはツンだな。だけど、それを言葉にするには至らない。


(;^ω^)「うーん。気のせいですお」

「そうかなあ、もうちょっと色んな人相の女性を描けるようにしなくちゃねえ」

(;^ω^)「分かりましたお」




最後にもう一度挨拶をして、部屋を出る。
口から自然と息が漏れた。それと同時に、徐に腕時計を見てみる。


やばい、もうこんな時間か。
 
 

 





 
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:24:43.95 ID:txeY88/m0
急いでしぃと約束をしていた喫茶店に向かう。
ウィンドー越しの席にしぃはもう座っていた。
怒った顔も美人だけど、こりゃ不味い。

(*゚ー゚)「もう…… 遅いなあ」

(;^ω^)「ごめんだお!」




(*゚ー゚)「罰としてお茶奢ってよね」

(;^ω^)「早くも原稿料が削られていくお」

(*゚ー゚)「ああ、今日締め切りだったのね? お疲れ様」

(*゚ー゚)「…なら、尚更ね!」


にこっと笑って、彼女は足を組み直す。
一方、僕は汚いスニーカーの紐を結び直していた。
スラリと伸びたロングブーツが俯いた僕の視界に入る。綺麗だ。
 
 

 





 
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:25:29.25 ID:txeY88/m0
暖かなコーヒーを啜りながら、頬を赤くさせて僕は徐に喋り出す。


( ^ω^)「今日、出版社の人に”お前の描く女はどれも同じ顔だ”って言われたお」

(*゚ー゚)「ふぅん」

( ^ω^)「自分でも、はて何故だろうと思ったら…」

(*゚ー゚)「例のあの子、ツンちゃんの顔なんでしょ?」

(;^ω^)「あうあう」

(*゚ー゚)「すぐにオチがつく話するよね、君って」


ミルクを掻き混ぜながらしぃは言う。
そして、テーブルに置かれていた何かの紙を裏返しにして、僕に渡した。


(*゚ー゚)「描いてみてよ」


( ^ω^)「?」
 
 

 





 
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:26:59.46 ID:txeY88/m0
(*゚ー゚)「何も考えず、無心で女性の人を描いてみて」

(*゚ー゚)「実験よ、実験」


実験…か。 僕は鞄から4Bの鉛筆を取り出し、白紙の上でチョイチョイと芯先を踊らせた。
見る見るうちに紙上には、輪郭が浮かび、瞳が入り、鼻筋が通り、唇が笑い、髪の毛が伸びた。
よし、完成。なんて酷いラフ画だ。まあ即興だし仕方無いのかな。

僕が黙ってそれを差し出すと、しぃはそれを手に取りまじまじと見つめた。


(*゚ー゚)「ふぅん、確かにツンちゃんね」

(*゚ー゚)「ずっと前に写真で見せてもらったのとよく似てる」


(;^ω^)「や、やっぱり?」

(*゚ー゚)「君もよく見てみなよ」
 
 

 





 
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:27:52.68 ID:txeY88/m0
( ^ω^)(確かにこれはツンだおー……)


田舎にいたとき、彼女をモデルに絵を描いた時は幾度となくあった。
だからといって、描く女性が全て彼女になるなんてこと…


(*゚ー゚)「上京する前、どうせ彼女をモデルに絵いっぱい描いたんでしょ?」

(*゚ー゚)「…でも、描く人が全部ツンちゃんみたいな顔になるって不思議よねっ」


しぃも全く同じことを考えているようだ。
コーヒーを一口コクッと飲み、外を見ながら彼女は言った。




(*゚ー゚)「やっぱり忘れられないんだね~………」

(;^ω^)「うーん…」

(*゚ー゚)「…」




 
 

 

 
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:28:47.06 ID:txeY88/m0
会話というのは、流動的である。
カップの中のコーヒーが残り僅かになった頃には、僕たちは冬休みの話をしていた。
僕は今ひとつその話題に夢中になれずにいた。
だが、しぃが次々と計画を提案するので沈黙は起きなかった。


( ^ω^)「…」

(*゚ー゚)「でさあ、お正月にはみんなでスキーにいかない?」

( ^ω^)「…」

(*゚ー゚)「大学の友達誘ってさ」

( ^ω^)「…」

(*゚ー゚)「もう、何考え込んでるのよ! 人にばっか喋らせてー!」

( ^ω^)「…あ! ごめんお! スキー?」

( ^ω^)「スキーならいい場所が」

―――――――!

( ^ω^)「場所が……」

(*゚ー゚)「何処?」

 
 

 



 
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:29:49.23 ID:txeY88/m0
僕は咄嗟に立ち上がった。


(;^ω^)「しぃ、ごめんお! ちょっと抜けるお!!」

(*゚ー゚)「え? 何? なんなの?」

(;^ω^)「見付けたんだお!!」

(*゚ー゚)「何がよ!」



それ以上返答する余裕がなく、僕はテーブルに小銭をジャラジャラと置いた。
そして小声でしぃに「戻ってくるお!」 と言い、コートを羽織って喫茶店を後にした。



(*゚ー゚)「……」

(*゚ー゚)「はーあ」
 
 

 




 
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:30:31.72 ID:txeY88/m0
70メートルくらい先に見える、紺のコートを着た女の子。
流れる髪の毛は肩くらいまであって、その色は鮮やかな栗色で、癖っ毛になっている。
身長は、およそ155センチくらい。
――ああ、君だ。


彼女を目指して、僕は走る。
走れば、距離は、縮まるはず。
だけど、縮まらない。精一杯、走ったと思ったら、彼女はまた少し遠退いている。
何故だ。何故なんだ。
不思議だ。



(;^ω^)「はあ…はあ」


重たいダッフルコートを着込みながら全力で走るのは、辛い。
何時の間にか僕は走るのを止めてしまい、ヨタヨタと歩いていた。



気が付くとそこは、とある大学の門の前だった。




 

 
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:32:04.01 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「ここは山村女学院……」



上京してから1年、とある日僕がツンに電話をした時だ。
その時、彼女はこの学校の名前を口にしたような気がする。
ここに進学するべく、勉強を頑張っていると言っていた。
ツンは今、ここに通っているのか――?


(;^ω^)

(^ω^;)


辺りを見回す僕の体に、雨が打ち付けた。
一気にその勢いは激しくなる。今から構内に入って、ツンを探すのも無理だ。

複雑な思いを抱きつつ、僕は喫茶店へ戻った。
しかし、ウインドー越しに見えるその席にしぃはもういなかった。





 

 
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:33:06.11 ID:txeY88/m0
― 三 ―


一度ではなく二度までも、僕はツンを見た。
でも僕の見たツンは、ツンではないのではないか。
そんなことをふと思う。 
雨漏りの酷い部屋の中、僕のモヤモヤした気持ちが煙草の煙となっていた。


( ^ω^)(もしかして…… 幽霊?)



雨は勢いを増していた。
窓や屋根に雨が落ちる音が随分賑やかで、そんな中明らかに異質な音が響いた。


―――トントン

( ^ω^)(こんな雨の夜に…… 誰だお?)




 

 
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:33:55.95 ID:txeY88/m0
僕はゆっくりとドアを開けてみた。
ああ、なんてことはない。隣の部屋のおじさんが尋ねてきたのだ。何の用だろうか。


( ^ω^)「なんですお?」

「いや、オレの部屋のパソコンなんだか変な画面になっちゃってさー」

「あんちゃん、そういうの詳しいよな? だからちょっと来てくれや」

( ^ω^)「はい、分かりましたお」

靴を穿き、外へ出る。
冷たい空気が、肌を打つ



( ^ω^)「…」

( ^ω^)「ツン…?」



3度目だ。彼女が、通路の隅にいた。
 




 
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:35:06.80 ID:txeY88/m0
―――通路の隅で、雨宿りをしている。
雨に濡れた体で、震えている。彼女は今、立ち止まっている。
トンボや蝉をそっと捕まえるような感覚を、僕は覚えた。

今なら、ツンに近付けると。会って、話が出来ると。
僕はおじさんを無視し、通路を進む。


「お、おいどうしたんだよ。オレの部屋はこっちだ」

そんな言葉も今はおざなりだ。
ズンズンと歩いていく。

今までの例がウソのように、距離は簡単に縮まっていく。
そして、僕の言葉が簡単に届くまでに、近付いた。



( ^ω^)「…なにしてるんだお? ツン」
 




 
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:37:52.08 ID:txeY88/m0
ξ゚⊿゚)ξ「!」

ξ*゚⊿゚)ξ「…」

ツンは驚いたような顔をしたあと、ほっと安心して頬を緩めた。
そして僕の手をおもむろに繋いだ。何故か言葉は発しない。
彼女の手はとても冷たかった。


( ^ω^)「今まで、何をしていたんだお?」

( ^ω^)「どこにいたんだお?」

( ^ω^)「何で連絡の一つもくれなかったんだお?」

( ^ω^)「地元の電話番号は変わってるし………」


彼女に言いたいことは、数え切れないほどあった。
だけど、それを一気に言うのは無理だ。
頭にパッと思いついたものから、手当たり次第浴びせていく。
困惑させてしまうだろうか。
そう思って彼女の顔を覗くが、何故かずっとニコニコとしている。

まるで……… 人形みたいだ。
 




 
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:39:14.55 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「ツン…?」

( ^ω^)「どうしたお? 何か喋ってくれお」


だがツンは喋らない。口を開かない。
押し黙っているわけではない。ただ、微笑んでいる。
体を震わせながら笑っているから、なんだか不憫に思えてくる。
とりあえず、部屋でシャワーを浴びさせなくちゃ。


( ^ω^)「僕の部屋に来るお、な?」


彼女はこくりと頷いた。どうやら言葉は認識してくれるらしい。
僕たちは部屋に向かった。





「…どーしたんだアイツ?」

「いきなりひとり言を隅でぶつぶつ言いやがって、あぶねぇー」
 





 
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:40:26.04 ID:txeY88/m0
部屋に入ったツンは、勝手にシャワーを浴び、勝手に僕の服を着て、
勝手に冷蔵庫の中のもので料理を始める。

僕は当然のことながら戸惑う。
ずっと、ずっと切望していた「彼女との生活」が、こんなにも突然に始まっていいのかと。




料理を作るが、お茶も口にしない。

問いかけには、答えない。

ただ、懐かしそうな顔で、ニコニコと僕を見つめるだけ。



僕は途方に暮れるが、とりあえず彼女が作ってくれた料理を食べ始めた。
安直な表現をするなら、故郷の味がする。
思わず頬が緩ませる僕の顔を見て、
やっぱりツンはただニコニコ笑うだけなのであった。

 








 
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:41:44.37 ID:txeY88/m0
ツンが食器を洗っているうちに、雨はあがっていた。
窓から、乾いたアスファルトが見える。野良猫も散歩を始めた。
彼女は何も喋らないし、しょうがないから仕事でもするかと思い、僕は椅子に腰掛けた。

( ^ω^)「…」

(^ω^ )「ツーン。コーヒーちょうだい」

(^ω^ )(あれ?)



もう一度振りかえった時。
その姿は消えていた。立ち上がって台所まで歩いてみる。
ピカピカになった食器が並んでいた。



(;^ω^)「これは一体…… どういうことだお」
 





 
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:42:19.27 ID:txeY88/m0
その日の夜、夢を見た。

小さな頃、かくれんぼをしたときの夢。

僕が鬼で、

ツンだけがいつまでも見つからなかった。

紅葉狩りをしたときの山で。





――――

―――――

―――――――




 
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:43:41.51 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「ビロードみっけ!」

( ><)「見つかっちゃったんです~」

( ><)「あと、誰がのこってるんです?」

( ^ω^)「えっと…」

( ^ω^)「ツンだお!」



('A`)「ツンちゃんは、いつも分かりやすいところにかくれているから」

('A`)「すぐにいつも見つけられるんだけどなあ」

(´・ω・`) 「とっておきのばしょをみつけたのかな?」


( ><)「あと3分以内にみつけられなかったらまたブーンがオニなんです!」

(;^ω^)「うぇー」





 
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:44:15.05 ID:txeY88/m0
ξ゚⊿゚)ξ「えへへー。やまの上までくれば」

ξ゚⊿゚)ξ「だれもこないよね!」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオとブーンと一回きたから、道おぼえてるもんね!」

ξ゚⊿゚)ξ「……」


ξ゚⊿゚)ξ「でも、だいぶ時間たったし… おりようかな」


―――

(#^ω^)「むきー! どこにもいねえお! またボクがオニだお!」

('A`)「しっかしみつからねぇなー… どこにいるんだろ」

( ><)「やまのうえ?」

(´・ω・`) 「ツンはそんなとこ行けないよ~」

( ><)「うーん…」






 
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:44:45.82 ID:txeY88/m0
ξ゚⊿゚)ξ「あれ? ここからどこだっけ?」

ξ゚⊿゚)ξ「えーっと… ああ、ここを左ね!」

ξ゚⊿゚)ξ「…あれれ?」

ξ゚⊿゚)ξ「…どうしよ」


ξ゚⊿゚)ξ「…」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、この道にはみおぼえがある!」

ξ゚⊿゚)ξ「ここを通れば―――」





ドサッ


――――――

(;^ω^)「おーい!! ツーーーン!!」

('A`;)「でてこーーーい!!!!」






 
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:45:29.66 ID:txeY88/m0
(;^ω^)「やばいおやばいお! もう日が暮れそう…」

(´・ω・`) 「はらへったー」

(´・ω・`) 「ツンもはらすかしてんじゃね」

( ><)「めっちゃしんぱいなんです!!!」

('A`)「うーん…」

(;'A`)「山でまいごになった………?」


(  ゚ω゚)「もしそーだったらツン、死んじゃうお!」

(  ゚ω゚)「さびしくて、お腹がすいて、さむくて、死んじゃうお!」

(  ゚ω゚)「さがすおおおおおおおおお!!!!!」



(´・ω・`) 「ばかっ」

(´・ω・`) 「ぼくたちまで山登ったら、ぼくたちまで迷子になる」

( ><)「大人をよぶんです!」





 
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:46:14.99 ID:txeY88/m0
「おーい! おーい! ツンちゃーーん!」

(´・ω・`) 「でておいでー」

(;><)「もうかくれんぼはおわったんですー!」

('A`)「どこだあーーー どこだあーーー」


(  ゚ω゚)「オヤジ!! まだみつからねぇのかお!」


「うーん……」



( ;゚ω゚)「ツンの身になにかあったらぼくはもうskgkldgl」


「落ちつけブーン。ツンの声とか、どこからか聞こえないか?」



 


 
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:46:45.58 ID:txeY88/m0
(;^ω^)「…」

( ^ω^)「ツーーーーン!!! いたら返事しておーーーー!!!!!」






       へんじしておーーーーーーーー!!!







――――――――――――

―――――――

――――






 
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:47:22.09 ID:txeY88/m0
― 四 ―


( ^ω^)「…ただいまだお」


ξ゚ー゚)ξ


( ^ω^)「今日のご飯はなんだお?」

( ^ω^)「おっ、肉じゃがだお!」

( ^ω^)「…ツン、僕の大好物をしっかり覚えてるんだお」


ξ*゚⊿゚)ξ


( ^ω^)「いただきまーす!」




 
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:48:00.04 ID:txeY88/m0
ツンと僕の奇妙な生活は続いていた。


彼女は毎日夕方頃に僕の部屋に来る。
鍵をかけていても、何故か中にいる。そして、夕飯を作っている。
そして、食べ終わった食器を洗ったら帰っていく。
日によって、すぐ帰る日と帰らない日があった。
帰らない日は、僕の仕事ぶりを見つめながら自分も勉強をし…(大学の勉強だろうか?) 
時々目が合うとニッコリとした。



そして、どんなに遅くとも22時までには部屋を出る。
まるで門限を気にする女学生のように。
気が付くと消えてそれきりの日もある。ちゃんと出口から出ていく日もある。
本当に不思議な存在だった。




 
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:48:43.41 ID:txeY88/m0
どこに住んでいるのかと、後をつけたときもある。
だが、最初に彼女を見つけた時のように、必ず途中で見失ってしまう。


( *^ω^)「ツン…」

ξ*゚ー゚)ξ「…」


でも、いいんだ。
彼女が誰であろうと、どんな存在だろうと、僕は彼女の訪れをいつも心待ちにしていた。


――――――奇妙な錯覚。




 
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:49:24.31 ID:txeY88/m0
12月24日 クリスマスイヴ



ガチャ


( ^ω^)「うぅー さむいさむい…」

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「やっぱり来てたお」


( ^ω^)「ケーキと、プレゼントを持ってきたお!」




プレゼントの小箱を渡すと、ツンはいつも通り微笑んだ。
その場で中身を確かめないで、丁寧にポーチの中へ入れた。
テーブルにはシチューが置かれている。優しくて懐かしい匂いが漂う。




 
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:50:04.62 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「これからもずっと一緒だお」

ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「…」



その時、乱暴にドアをノックする音が聞こえた。


( ^ω^)「だ… 誰だお?」

( ^ω^)「ごめんおツン。ちょっと待って…」



僕は恐る恐る扉を開けた。酔っ払った隣のオッサンだろうか。

―――いや違う。



(*゚ー゚)




 
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:51:04.84 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「し、しぃ!?」

(*゚ー゚)「なんでパーティーに来なかったのよー」


しぃは水色の華麗なドレスを身に纏っていた。
ああ、どこの主宰だか忘れたけど、
クリスマスのパーティーに僕も御呼ばれされていたんだ。
すっかり忘れていた。仕事が忙しいのと、ツンのことで頭が一杯で……


彼女は明らかに酒気を帯びていた。
いつもよりちょっと崩れた語調で、僕に話し掛ける。


(*゚ー゚)「君がいなくて、寂しかったんだからぁー」

( ^ω^)「ご… ごめんお」

ξ゚⊿゚)ξ「…?」


僕は後ろのツンに手振りで「風呂場に隠れろ!」と指図した。
その通りツンは動いてくれた。 
しぃはドレスの合間から長い足を伸ばし、僕の足に絡める。一気に二人の距離が近付いた。




 
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:51:42.84 ID:txeY88/m0
(*゚ー゚)「ねえ君… 今夜、一人なの?」

( ^ω^)「え… いや…」

しぃは強引に部屋にあがってきた。
辺りを見回し、鼻息を一つ。そして、呟いた。


(*゚ー゚)「なんだぁー、誰もいないじゃない」

(*゚ー゚)「二人で…… 過ごそうよ」



そんなことを言う彼女の瞳は虚ろだ。
いつものしぃとは全然態度が違う。どれだけ酒を飲んでいるんだ。
二人で… ダメだ。 ツンがいるんだ。


 


 
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:52:23.09 ID:txeY88/m0
(;^ω^)「駄目だお… ツンがいるんだお…」

(*゚ー゚)「ツン? 田舎に残してきた子?」

(*゚ー゚)「あんな子もう忘れなよー… だってもうしばらく連絡とってないんでしょ?」

(;^ω^)「あ、いやー…」


しぃの喋りは止まらない。
どんどん感情的に、切実になっていく。


(*゚ー゚)「私、気付いたの」

(*゚ー゚)「いいえ、ずっと前から気付いてたけど、言葉に出来なかった」

(*゚ー゚)「クリスマス… しかも酒の勢いを借りてやっと言える…」




ξ;゚⊿゚)ξ「…」


 


 
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:53:25.38 ID:txeY88/m0
(*゚ー゚)「君のことが好き! 大好きなの!」

(*゚ー゚)「君だって私のこと好きなんでしょ?」

(*゚ー゚)「どうなのよ!」

(;^ω^)「え… いやあ、別に嫌いじゃ…」

(*゚ー゚)「大体あなた煮え切らないのよ!」

(*゚ー゚)「いつまでも未練たらたらでーーーー!!」

(*゚ー゚)「一緒に暮らそうよ! ねえ!?」



しぃが酔いに任せて思いの丈をぶちまけたかと思えば、
後方から風呂場の戸が開く音がした。


ξ;゚⊿゚)ξ「…」


(;^ω^)「ツン!」


 



 
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:54:26.71 ID:txeY88/m0
ツンとしぃが対面した。不味い。これは非常に不味い事態だ。

だが、しぃは臆することなくまだまだ僕へと言葉を浴びせる。
ツンはむすっとした顔でじっとしぃを見る。

オーバーヒートしたしぃが、とんでもないことを口に出した


(;゚ー゚)「抱いてよ! やっぱり言葉で通じ合わないなら体で――」

ξ##゚⊿゚)ξ「!!!!!!」

(;^ω^)「君は何をいっちょるのかね!!!!!」




それと同時に、ツンがスッと立ち上がった。
と思えば、僕に覆い被さり、熱い抱擁と接吻をしてきたではないか。
しぃが見てる前で… や、やめてくれ。

彼女の柔らかい肌に埋もれながらも、僕は彼女を振り払おうとした。
 




 
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:55:38.14 ID:txeY88/m0
(;;^ω^)「ちょ! やめるお!! しぃが見てるお! うわああああっちょ!!!!」


もがく僕の様子を見て、しぃが突然酔いが覚めたような顔をした。
何か呆気に取られているようだ。


(*゚ー゚)「君……… なにやってるの?」

(*゚ー゚)「……ひとりで」



(;^ω^)「え!? なにがってこの子が突然…!!!」

(;^ω^)「―――ひとり?」



    ……しぃには見えないの?

          …………何が?
 




 
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:57:05.21 ID:txeY88/m0
見える、見えない。
今はその問題はいい。

ツンは泣きながら部屋を出た。
あんなに悲壮を帯びた表情は、都会で出会って初めて見たものだった。



(;^ω^)「どいてくれお!」

(*゚ー゚)「きゃっ!」




(*゚ー゚)「…」

(*゚-;)「なんなのよーー!!」



(;^ω^)「ツーーーン!」





 
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:57:47.97 ID:txeY88/m0
ツンは駆ける。僕も駆ける。
彼女の走るスピードは速いわけじゃない。だけど、どんどん遠ざかっていく。
そう、まただ。いつもの現象なんだ。近付きたくても、近付けない。
君は一体、何者なんだ。


(;^ω^)「待って! 待って欲しいお!」

ξ ⊿ )ξ「…」




(;^ω^)「待って―――」




ξ ⊿ )ξ

ξ ⊿:::

ξ::::::

::::::::




 
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 20:58:52.70 ID:txeY88/m0
そうしてツンは、いつものように闇に消えていった。
僕は立ち止まり、ひゅーひゅーと肩で息をする。一体、聖夜に僕は何をやっているんだろう。



他人からは見えもしない存在と。


( ^ω^)「………」


( ^ω^)「帰るお」


部屋にはまだしぃがいるだろうか。
彼女には悪いことをした。
家路を辿る僕の頭の中は、今度はしぃへの謝罪の念で一杯になった。


忙しい、頭だ。




 
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:00:11.85 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「…」


ゆっくり部屋の扉を開く。
シチューの良い匂いが漂ってきた。湯気も漂っている。
しぃは酔いが抜けたらしく、いつもの落ちついた表情で待っていた。
殺風景な部屋に、普段より気合を入れた化粧と衣装の彼女。
まるで、お姫様だった。


(*゚ー゚)「…おかえり」

(*゚ー゚)「温めなおしといた」

(*゚ー゚)「…せっかく、作ったんでしょ?」

(*゚ー゚)「……ツンちゃんが」




( ^ω^)「あれはツンじゃないお」




(*゚ー゚)「?」




 
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:01:13.00 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「本当のツンは、あの子じゃない」

( ^ω^)「ツンは、きっとここから離れた所にいるんだお」

( ^ω^)「探して欲しいって僕に言ってるんだお」

(;^ω^)「あの子はそれを伝えに…」

(*゚ー゚)「何……言ってるの?」


自分でもよくわかんねぇお…


でも、




( ^ω^)「―――かくれんぼは、終わっていないんだお」





 
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:02:22.22 ID:txeY88/m0
ツンと食べるつもりだったケーキは、しぃと食べた。
そしてその夜、僕としぃは一緒に眠りについた。
初めて体を重ねた。何故だろう。自分で自分が不安だったのか。
それとも、妙に人肌恋しかったのか。
あの時の僕は、無償に”温もり”みたいなものを求めていた。
とにかく、何かに寄り掛からないと耐えられないような、そんな気持ちを抱いている。



「今年は、地元で年を越すお」

   「え、どうして?」

「ツンが迷子になってるんだお。だから僕は見つけに行かなくちゃ」

   「……そう」

「意味不明でごめんお。ツンを見つけられたら、自分の中で整理がつくと思うお」

「だから、その時になったらもう一度ちゃんと君を話をしたいお」

   「…わかった」


 


 
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:03:04.76 ID:txeY88/m0
「…でも、君は勘当同然で家を出たんじゃなかった?」

「…そんなの、関係ないお」





新幹線で3時間半。
僕は故郷へ飛んだ。実に6年振りの帰郷。




 
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:04:11.47 ID:txeY88/m0
― 五 ―



( ^ω^)「相変わらずの雪景色だお………」



6年振りに目にする故郷は、予想通り雪に覆われていた。
寂れた無人駅は新しくなり、町にはポツポツと初見の店舗が建ち並ぶ。
広がっていた田んぼの数割は住宅に代わり、道路には黄色い除雪車が闊歩していた。
相変わらず変わらない部分もあれば、ガラッと変わった場所もある。
ちょっとだけ感傷的な気分に浸りつつも、僕は自宅へと向かった。
バスでさらに1時間。僕の住んでいたところは、未だに「村」なんだな、と実感した




バスの車窓から見える景色が、段々田んぼだけに…
つまり、白一色になっていく。
かつての見飽きた景色は、今では勿論新鮮で、
こんなに綺麗なものだったかと少々感動を覚えた。




 
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:05:00.74 ID:txeY88/m0
バス停から下りると、人っ子一人いない銀世界が僕を迎えた。
ここからさらに800メートル程歩けば、僕の家だ。

歩いていくうちに、足が冷たくなっていった。
こんな所にスニーカーで訪れる僕もバカだが、貧乏で冬靴を持っていないからしょうがない。
早く家で暖まりたいとは思うが、両親は僕を迎えてくれるのだろうか……



( ^ω^)(もし追い返されたらどうするお)

( ^ω^)(ま… そんときゃそんときだお)





道の先には山が見えた。
いつもみんなで遊んだ山だ。今は、ホワイトチョコでコーティングされたように見える。




 
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:05:41.66 ID:txeY88/m0
少し歩くと、住宅が密集している地区に辿り着いた。
ここは6年前とさっぱり変わっていない。僕は少し安心した。
駄菓子屋を過ぎて、タバコ屋の角を曲がって、

1… 2… 3軒目。


( ^ω^)(着いたお……)

( ^ω^)「深呼吸、深呼吸」


( ^ω^)「…よしっ」



僕は意を決して、色褪せたインターフォンのボタンを押す。
「どなた?」と聞き慣れた声がした。
父に内緒で、大学時代仕送りや手紙を送ってきてくれた母の声だ。


何故か僕はひそひそ声で返事をする


(;^ω^)(おいすー…… ブーンですおー……)




 


 
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:06:52.29 ID:txeY88/m0
「あらブーン!? おとーさん!!! おとーさん!!! 
 ブーンが帰ってきたわよーー!!」



戸の向こうでどたどたと走る音がした。
とりあえず僕は戸を開き、玄関で二人を待つことにした。
寒さと緊張で、体が震える。


少しして、親父と母が出迎えた。



J( 'ー`)し「おやまあブーン…… 何年振りかね」

( ^ω^)「6年ぶりだお」

親父のドスの効いた声が響く。

/ ,' 3「どの面下げて帰ってきたんじゃ」





 
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:07:36.57 ID:txeY88/m0
(;^ω^)「……」

(;^ω^)「…………」


( *^ω^)「こういう顔ですおー!!」

( *^ω^)ニコヤカ


あー駄目だ。ぶん殴られる。グッバイ世界。グッバイ故郷。


/ ,' 3「…」

(;*^ω^)「…」


だが、親父はただ眉間に皺を寄せるだけで、何もしない。
振り返り、居間に戻ろうとした瞬間、とある一言を口にした。



/ ,' 3「―――明日雪かきするから、手伝えや」


…僕の隣にいた母が、ニヤニヤと笑っていた。





 
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:08:49.39 ID:txeY88/m0
無事に帰省した訳だが、コタツに入りながら、蜜柑を食べ、テレビを見る。
素晴らしい安らぎだ。



( ^ω^)「いやー… やっぱり我が家はいいお!」

J( 'ー`)し「どうだい最近は。ちゃんと食べてんのかい?」

( ^ω^)「まあ、なんとか… 貧乏なのは変わらないお」

J( 'ー`)し「そこの棚のさ、緑のファイル見てみなさい」

( ^ω^)「……これかお」


そのファイルには、僕が今まで描いた挿絵やカットが貼られていた。
物凄く小さな部分でも、ページごと貼られてある。



僕は胸を締め付けられた。




 
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:10:35.04 ID:txeY88/m0
J( 'ー`)し「お父さんがね、コツコツ作ってるのよ」

J( 'ー`)し「ね?」

/ ,' 3「ふん」



( *^ω^)「…」

( ^ω^)「あ、そういえばカーチャン」

J( 'ー`)し「なんだい?」


僕は何と無く気になっていたとある事柄を尋ねた。


( ^ω^)「小さい頃、みんなであそんでいてツンが迷子になったお
      あんとき、ツンはどこにいたんだっけ?」




 
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:14:36.28 ID:txeY88/m0
――あの時、僕は夢中でツンを探していた。
本当にツンが死んだらどうしようと、もうグチャグチャに泣きたい気分だった。
しかし、それを押し殺して探していたから、当時のことは今となっては真っ白だ。


J( 'ー`)し「えーと… どこだったかしらねえ」


親父が口を開いた。


/ ,' 3「崖下の洞穴だよ」


( ^ω^)「崖下の洞穴――――――! ああ、そうだお」



ツンは迷子になって崖から落ちた。
だけど運よく洞穴が開いていて、そこでずっと助けを待っていたんだ。




 
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:17:27.04 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「そうだったお!」

( ^ω^)「……明日はツンに逢いにいく予定だお!
      あいつは今どこでなにしてるんだお?」


/ ,' 3「…」

J( 'ー`)し「…」




何だろうこの沈黙は。
僕が招いた突然の重たい沈黙。


もしかして。
僕の背筋にヒヤッとしたものが走った。まるで冷たい電流のように。



J( 'ー`)し「ツンちゃんは…… アンタが出てった2年後に死んだよ」





 
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:22:32.60 ID:txeY88/m0
( ^ω^)「……」

( ^ω^)「え?」




/ ,' 3「あっという間だよ」

/ ,' 3「交通事故だ」





(#^ω^)「なんで!! なんで僕に教えてくれなかったんだお!!!!」



/ ,' 3「おまえは、家を出ていった。」

/ ,' 3「今はともかく、
    あの時からオマエはオレの息子でもなんでもなくなった」

/ ,' 3「若かった自分を恨め」

テーブルを思わず拳で叩いた。
涙が流れない代わりに、歯を思いきり食いしばった。
僕の悔しさの全てが、そこに集中しているようだった。




112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:28:58.50 ID:kzywFjND0
J( 'ー`)し「イイ子だったのにね……」

J( 'ー`)し「あんたが田舎に残ってれば、こんなことにはなってなかったのかもしれないよ」

J( 'ー`)し「いいお嫁さんになれると思っていたんだけどね…」

(;^ω^)「……」



6年振りに帰省した故郷。

久方ぶりのお袋の味は、さっぱり喉を通らなかった。
頭の中で色々な謎が行き交う。彼女は4年前に既に死んでいたんだ。
じゃああの子は何者なんだ。全てが分からない。




―――時計の針は、8時を回っていた。

 
 
 

 
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:34:18.79 ID:kzywFjND0
自室の窓から外の風景を見つめる。
見事なまでに真っ暗だ。


机の引き出しを開けると、ツンと僕が並んだ写真を見つけた。
他にも学生時代の成績表、絵画でもらった色褪せた賞状、意味のわからないガラクタ……

ツンの顔を描いた絵も山ほど出てきた。
でも今は… あまり見たくない。


( ^ω^)「……」


ベッドに寝転がり、目を瞑る。
あのときの親父の声が、何故か頭の中で繰り返される。




 
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:36:42.21 ID:kzywFjND0
――――落ちつけブーン。ツンの声とか、どこからか聞こえないか?




どこからか…………



( -ω-)「……」

( -ω-)「聞こえるお」




ツンが僕を、呼んでいるお――――――


 


 
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:39:07.86 ID:kzywFjND0
J( 'ー`)し「あらブーン? こんな夜に懐中電灯持ってどこ行くの?」

J( 'ー`)し「コンビニは歩いて1キロよ?」



( ^ω^)「山だお!」



J( 'ー`)し「…山?」

J( 'ー`)し「ねえ、ちょっと待ちなさ――」




母の声を遮って、僕は家を出た。
冷たい夜の空気が体を刺していく。行こう。ツンの場所へ。




 
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:43:31.35 ID:kzywFjND0
―――冬の山は険しすぎる。しかも夜。
懐中電灯の小さな灯りを頼りに走っていくのは、かなり心許ない。
だけどこの山から、ツンが呼んでいるような気がするのだ。


( ^ω^)(やばい…)

(;^ω^)(吹雪いてきたお…)


激しくなってきた雪を浴びつつ、親父の長靴でノシノシと山を散策していく。
闇雲に歩いて何が見つかるというのか?
僕は、自分で自分が何をやっているのかよくわからなくなってきた。



(;^ω^)「ツーーン!!!」


(;^ω^)「どこだおーー!!!」
 
 


 
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:46:31.46 ID:kzywFjND0
(;^ω^)「ハアハア…… まるであの時みたいだお!」



ツンはこの世にいないのに、僕は彼女の名前を叫び続ける。
「ブーン!」って、突然どこかから現われることなんてないのに、叫び続ける。
僕は何をやってるんだ? いい加減にしてくれ。 まるで頭が可笑しい人のようだ。



(;^ω^)「ツーーン!! ツーーン!!」


山をある程度登ったところだった。



懐中電灯の光が、消えた。




 
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:50:41.55 ID:kzywFjND0

「うわわ……」

「右も左も、全然わからないお!」

「ここは慎重に進まないと、やば―――」




ドサッ!!




なんてドジなんだ。僕は見事に崖から落ちた。
落下する体。ああ、今度こそグッバイ世界――――
 
 


 
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:53:13.26 ID:kzywFjND0
( >ω<)「―――!!」

( -ω^)「…」

( ^ω^)「?」



…あれ? 落下運動はすぐに終わった。
僕は、今静止している。何か、宙ぶらりんになっているような感覚だ。
おそるおそる背中を擦ってみる。……木の枝?
なんと、コートが枝に引っかかっているではないか。
こんな漫画のような事態って本当にあるんだな。九死に一生を得たというやつか。


( ^ω^)「…だけど、ここからどうすりゃいんだお」




そう思う僕の眼前に、他の景色とは少し違う暗みが見えた。


もしかして、洞穴――?




 
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 21:57:14.95 ID:kzywFjND0
僕は四肢を駆使して、なんとか洞穴の中へ入り込んだ。
だからといって、事態が好転したかといえばそうではない。
山の構造上、上には登れなくなっている。



( ^ω^)「…やばいお」

( ^ω^)「ツンもここに、落ちたのかお」

(;^ω^)「今は夜だお…」



(;^ω^)(死亡フラグ―――?)




外は猛吹雪。
僕はコートの中に入っていたチョコを食べながら軽く焦っていた。
 


 
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:00:29.69 ID:kzywFjND0


(  ゚ω゚)「ガチガチガチガチガチ」

(  ゚ω゚)「ブルブルブルブルブル」




薄れていく意識の中、洞穴に一筋の風が入り込んだ。
それによって僕はますます身を震わす。

その時だった。

カサッ…


 



 

 
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:03:46.77 ID:kzywFjND0
(  ゚ω゚)(奥で何かが揺れた……?)



僕は重たく冷たい体を引っ張って、洞穴の奥へ進んでみた。
藁が積み重ねて置いてある。この藁が揺れたんだ。
そして…


(  ゚ω゚)「この下に… なにかあるお…」




僕は悴む手で藁を退かす。



(  ゚ω゚)「これは……」


僕はコートの中から携帯を取りだし、小さなライトを点灯した。
そして、藁の下にあったものに驚く。


 


 
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:08:40.42 ID:kzywFjND0
(;^ω^)「食器が一揃い… 御椀にお皿に箸にコップ… まるでおままごとだお」

(;^ω^)「この鞄の中には…」

(;^ω^)「山村女学院の入学案内。 東京名所の絵葉書。 
      そして… 東京行きの新幹線の切符だお…!」


(;^ω^)「こ、この箱の中は!?」



ξ゚⊿゚)ξ


(;^ω^)



ツンにそっくりな顔した、人形だお――――
 
 


 
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:11:30.27 ID:kzywFjND0
(;^ω^)「いや、ツンにそっくりなんじゃないお」

(;^ω^)「東京で僕と過ごしたあの子が、この人形にそっくりなんだお…」

(;^ω^)「それじゃあ―――」


鞄の底に敷いてあった1枚の紙が、風で飛ばされる。
僕は慌ててそれを掴み取る。



(  ω )「これは………」


―――――――

――――

――
 
 


 
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:15:25.86 ID:kzywFjND0
ξ゚⊿゚)ξ「出発の日なのに、お父さんもお母さんも来てないね」

( ^ω^)「ま、当然っちゃー当然だお」

( ^ω^)「てか、こっちのほうがかっこいいお! 男の旅立ちって感じするお!」

ξ゚⊿゚)ξ「また変なこと言う……」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、これ、お守り…」

( ^ω^)「ありがとうだお!」


( ^ω^)「僕からは…… これだお」


ξ;゚⊿゚)ξ「また私の顔ー?」


(;^ω^)「そんなこと言わずに受け取ってくれお!」

( *^ω^)「今までで1番の出来なんだおー!」


 


 
140 名前:>>139 わるいね:2007/12/30(日) 22:18:46.50 ID:kzywFjND0
ξ゚⊿゚)ξ「…」

ξ゚⊿゚)ξ(あ、確かに……)

ξ*゚⊿゚)ξ「あ、ありがと。ブーン」


( ^ω^)「どーいたしましてだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「…ブーンならきっといい絵描きになれるよ」

( ^ω^)「ははは! 当たり前だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「…」

ξ;⊿;)ξ「本当に… 行っちゃうんだね…」

( ^ω^)「ツンー? 何泣いてるんだおー?」

ξ;⊿;)ξ「べ、別に泣いてなんかいないもんっ!」




 
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:21:44.92 ID:kzywFjND0
ξ;⊿;)ξ「私も絶対東京に行くからね……」

( ^ω^)「待ってるお。その頃には、立派な絵描きに僕はなってるお」

ξ;⊿;)ξ「うん……」


 あ…、電車が来たお


   それじゃ、サヨナラ―――――――



――――――――――

―――――――

――――



( -ω-)「やっと… 見つけたお」

( -ω-)「……」


(これが俗に言う、走馬灯というやつか)


 


 
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:24:31.79 ID:kzywFjND0
おーい!! こっちだ! この洞穴に人がいるぞー!!


 よーし!! ロープだ! ロープを下ろせーー!!!!



           大丈夫か!? 意識はあるか!?


かなり体温が下がっている! 急げ!




( -ω-)「……」




 
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:47:43.73 ID:kzywFjND0
6年振りに故郷へ帰って来た次の日、
僕は県の新聞に遭難者としてその名を連ねた。


両親は呆れ返り、「もうずっと東京で絵描いてろ」と言う始末。


僕は今、病院にいる。あと数時間後には退院するんだけどね。
――あの山で遭難したと聞いて、今は違う町に住むツンのお父さんが僕を尋ねてきた。
相変わらず、厚いレンズの眼鏡が特徴的だった。




( ^ω^)「久しぶりですお」


( ФωФ)「ああ、久しぶりだな。ブーンくん」


 


 
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:49:23.96 ID:kzywFjND0
( ФωФ)「なんでもあの洞穴で救出されたそうじゃないか」

( ^ω^)「ええ、なんだかあの山から、ツンが僕を呼んでいるような気がしたんですお」

( ФωФ)「…それもそうだろうね。君、洞穴にあるアレを見ただろう」

( ^ω^)「人形とかのことですかお?」

( ФωФ)「―――そうだ」


( ФωФ)「恥ずかしいが、あれをあの洞穴に持ち込んだのはワシでね
       そしてあれはツンそのものなんじゃ」


( ФωФ)「君もきいたこと無いかい? この地特有の言い伝えなんじゃが、
       あの山では死者の魂が生前と変わりなく生き続けるんじゃ。
       だから今でも亡くなった人のために、様々な品物を奉納し、供養する人が絶えない」

 


 
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:51:55.74 ID:kzywFjND0
( ФωФ)「例えば赤ん坊を亡くした親がいるとするだろう…
       だから七五三になれば晴れ着を納める。小学校の入学期にはランドセル…」

( ^ω^)「じゃあおじさんも、ツンの魂が生き続けて、成長していると?」

( ФωФ)「そうさ。君も信じるかい? この話を」

( ^ω^)(信じるもなにも、ツンは都会まで遊びに来ましたお……)




( ФωФ)「ワシにはね… それしかないんじゃ。 
       不憫に一生を終えたあの子に、ワシが、してやれることはね」





( ФωФ)「でも、それももう終わりにしようと思ってる。
       年頃だからな… 結婚させるよ」
 
 


 
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:52:39.54 ID:kzywFjND0
( ^ω^)「結婚? 死んだ人が結婚ですお?」

( ФωФ)「ま、所詮は”そのフリ”だがな… 」


そう言って、おじさんは木箱を差し出した。
その中には、僕そっくりの人形が入っていた。

( ФωФ)「君には悪いけど、無断で作らせてもらったよ」

( ФωФ)「今からあの洞穴にいって一緒に奉納するよ」


    嫁にやってしまえば、親の責任はそれまでだからねえ…………



 
159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:54:23.43 ID:kzywFjND0
― 六 ―




(*゚ー゚)「……」

( ^ω^)「……」


(*゚ー゚)「結局、年はこっちで越すのね」

( ^ω^)「まあ…、 あっちには色々事情があって居辛くなっちまったお!」

(*゚ー゚)「でも、親と和解はしたんでしょ?」

( ^ω^)「うん、まあ…」



ラジオから「行く年来る年」が流れている。
僕としぃは身を寄り添い合って、ただぼーっとしていた。


2007年も、終わりだ。
 


 
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:54:53.43 ID:kzywFjND0
――トントン



( ^ω^)「ん? 誰だお?」

(*゚ー゚)「え、誰かノックした?」

( ^ω^)「しぃには聞こえないお?」

( ^ω^)(あ、もしや―――)





僕はドアを開いた。そこに立っていたのは……



( *^ω^)ξ*゚⊿゚)ξ


 


 
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:57:33.41 ID:kzywFjND0
入り口には、
スーツを着た僕と、余所行きの綺麗な服を着たツンがいた。
二人とも実に幸せそうに笑っている。



(;ω; )「……そうか」

(;ω; )「…結婚、したんだね」

(;ω; )「おめでとう、本当におめでとうだお」




( *^ω^)ξ*゚⊿゚)ξ




(;ω; )「…」

(;ω; )(おめでとう………)




 
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 22:59:43.65 ID:kzywFjND0
僕は目を瞑った。
貯まっていた涙が、上瞼と下瞼の間から溢れ出た。




そして、再び目を開いたとき、二人はもうそこにいなかった。




(*゚ー゚)「…ブーン? 何泣いてるの?」


(;ω; )「あ… いや、なんでもないお」




 
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 23:06:53.49 ID:kzywFjND0
( ;ω^)「…ふぅ」

( ;ω^)「あ、そういえば年賀状、とある人にまだ書いてなかったお」


(*゚ー゚)「えー!? 今更? 失礼な男だなー」


僕は机に向かい、ペンをとる。



( ^ω^)「拝啓、津出一郎様…」



今日、ツンが僕を尋ねてきてくれました。

旅行鞄を持っていたから、新婚旅行に出かける前の挨拶に立ち寄ったという感じでした。

相手の男性は、少し頼りなさそうに見えたけど、まあ大丈夫だと思います

本当に二人とも幸せそうでした。彼女らの顔は、明るく輝いて見えましたよ。
 
 


 
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 23:07:33.15 ID:kzywFjND0
( ^ω^)「これで… よし」



僕はペンを置き、窓を開け、新年の星空を見上げた。
一際強く瞬く二つの星が、僕とツンに見える。


( ^ω^)(いつまでも… お幸せに…………)




(おしまい)




 
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/30(日) 23:14:16.79 ID:XJ/+Yckl0

最後ツン達が豹変してブーンを連れて行くとかなったらどうしようかと思ったが
ハッピーエンドで終わってよかった
 


 
171 名前: ◆TRIPOo2dZU :2007/12/30(日) 23:16:12.53 ID:kzywFjND0
あとがき


最初に断りを入れておけば良かったとエーゲ海より深く反省してます。
この作品は、藤子F不二雄SF短編集の

「山寺グラフィティ」を元ネタにして執筆させて頂きました。
オリジナル展開も入れたかったのですが、

結構まんまになってしまいましたね。 うひゃ。

本当はクリスマスに投下したかったのですが、
諸事情により間に合わず、本日の投下となりました。



下はこの作品のイメージソング的なものです。
http://www.youtube.com/watch?v=qAHyiJWw7ws

ジャマなテロップついてますが気にしないでください。


それでは皆さん良いお年を!





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コメント
この記事へのコメント
  1. 名前:AAな名無しさん #- | 2008/01/04(金) 09:29 | URL | No.:778
    (´;ω;`)ウッ…
    朝っぱらからウルっときたぜちくしょう…


    ブーンもツンも末永くお幸せに。
  2. 名前:名無しビジネス #- | 2008/01/05(土) 00:40 | URL | No.:791
    いい話だった。
    でもなんかのマンガで見たような話だ。
  3. 名前:名無しビジネス #- | 2008/01/17(木) 05:17 | URL | No.:1284
    泣いた。
    ブーン系小説でこんなに泣くとは…
  4. 名前:名無しビジネス #- | 2013/06/02(日) 13:20 | URL | No.:767321
    長すぎwww
    つまらん
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